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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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危急存亡の秋…の2

 男二人は昼食を終え地図を開く。

(5…5…ねぇ?)

 アルバートはルリから受け取ったメッセージの意図を思案していた。間違いなく行き先のことだろうが、『5』ではなかなか予測が立てづらい。

「さて、来るとしたら…やはり湖畔の街から。向かうとしたらこの山を降りて西へ。途中の分かれ道からぐるりと周り私のいた村にたどり着くはず。」

 ルリたちは湖畔の方へ戻るはずがない。先に進まないといけないのだから間違いなく山を降りた。その先が『5』なのである。

(5時の方向…、とか?)

 方位を示している可能性は大いにあった。だがここから見て5時の方向は湖畔を抜けたずっとさき、もともとアルバートが本物の騎士の代わりに待っていた街である。そこで落ち合う意味はない。

 むしろ現時点で二人の護衛がついていることから考えれば、次の神殿を目指すはずだ。となれば、ここから近いのは…

「ラルドか。」

「ほう?なぜ。」

 アルバートは思わず声に出してしまったことを反省する。だが顔には出さなかった。

「ここに来ていたとしたら…だけど。」

 遠いところまで引き離す予定だったが、声に出してしまい理由を聞かれてしまった以上はごまかすと怪しまれる。

「神官様が待っていた村の位置だ。ラルド寄りだろ?そしてさっき湖畔の避暑地について、足止め

をくらってるとしたらこにいる、って言っていた。ラルド側から来てたら、あんたのことを忘れていない限りは出会えているはずだ。」

 しかし当のルリ本人はすっかり忘れていた。

 〈5〉の場所を探し当ててこの男を出し抜くしかない。

(危険で下策なのはわかるが…)

 少しばかりためらいが残る。だが、先を目指そうとラルド側行きのシャトルバン乗り場に近づいたときにある会話が耳に入ってきたのだ。

「…マロウのやつ災難だったよなあ。」

「なんか襲われたらしいぞ。」

「傷はなかったって言ってたが生きた心地しなかったと。」

「ちげえねえ。」

「美人が駆け込んできたからって鼻の下伸ばしてる場合じゃなかっただろうなあ。」

 馬車のドライバーたちが近くにたむろして何やら談笑をしていた。内容はとても興味深い。オーギもその会話に気づいたようだ。だがアルバートのように近づいて話を聞くような真似はしなかった。

「よう、お疲れ様。一つ馬車を出してほしいんだけどいいかい?」

 シャトルバンのほうが断然早い。だがこの者たちはなにか知っていると踏んだアルバートは馬車に乗りながら話を聞き出すことにした。

「はいはい、旦那様方。今持ってきますからね。」

 ポクポクと蹄を鳴らして馬を二頭連れた質のいい馬車を用意してくれた。

「トロスさんはこちらに乗りたいと?」

「まあまあ、急ぐ気持ちもわからなくはないですがね、せっかくの旅です。なかなか風情があっていいでしょう?」

 オーギがシャトルバンに乗るなら乗るで構わない。アルバートは馬車に乗り込んで、オーギから離れることができる。そうなれば占めたもの、なのだが、オーギはなんとアルバートに同調してきた。

「いや、トロスさんはなかなか旅慣れているようで。」

「ははは、こうなってくるといいもんですよ。放浪というのは。」

 アルバートはその嫌味のない素直な感想に少し心を許しそうになった。

(危ない危ない。)

 聖職者はたいがい詐欺師だ。信用するな、と叩き込まれている。己の油断に鞭を打った。

 何度もいうがオーギの目的はルリを守ることで二人は互いに同僚に当たる。こうひて無意味な駆け引きをしながら二人を乗せた馬車がラルドに向かって発進した。

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