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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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誰かさんを忘れてる…の2

アルバートは気にぶつかったりであちこち痛む体を押さえて、自分が落ちてきた坂を見上げた。正規のルートがはるか上にある。

「はぁ…」

 持っていた小さな救急セットで擦り傷などの応急処置をする。

 完全な森の中での孤立。幸い大事な荷物は持っているので、いざとなれば一夜ぐらい過ごせる。問題は野生動物である。この森には小動物が主だが、シカがいる。イノシシもいるようだ。

 アルバートは弓は使えても狩人ではない。戦いのための弓術なら心得はあるが、逃げる四足の生き物を仕留めるのは難しい。

「食料は…」

 仕掛けを作る余裕はない。ただでさえルリたちを待たせている。なんとか相手に自分の居場所を教えられれば…。

 しんしんとした森の中、落ち葉のこすれる音や茂みから小さなざわめきがよく聞こえる。アルバートは正規の道に戻るルートを探す。そしてもう一つ、

「ルリがいてくれてよかった。」

 マジックダイアル。彼女の魔法が込められた方位磁石。流石に術者の位置はわからないが、同じ空間(この場合はどれくらいの範囲だろうか。)にいるときなら正常に回る。狂って動いていないということは、麓ぐらいにはいるのかもしれない。

 傷を塞ぎ、一つ一つ状況を確認するだけでも冷静になれるものである。アルバートは愛用のナイフで付近の木に自分が歩いた印をつけた。

「……よし。」

 ただしアルバートは一つ間違えたことをする。自分の右手側に正規ルートがあると予想して、木肌に触れながら下へ下へと降りていった。

 案の定である。

 正規のルートは見つからず、日も暮れ始めた、そして最悪なことに…

「……あれ、ダイアルが…」

 カタカタと針が揺れ始めている。

「まじか…。ちょっと待ておい。」

 マジックダイアルに向かって話しかける。そんなことを気にも留めず針の揺れが段々と大きくなっていった。

 仲間思い、では駄目なのだ。時にはいらないものを切り捨てることも必要。

「『先生』はそう言ってたが…」

 いざ自分が、となると焦ってしまうものである。冷静に考えれば三人の下す決断は間違ってないのだが、

「このまま無報酬で捨てられてたまるかよ!」

 そうだ。まだアルバートは何ももらっていない。美味しい思いもしていない。ぐるぐると狂い出したダイアルがアルバートの闘争心を刺激した。徐々に暗くなる森の中をアルバートは駆け回ってしまった。ライトのおかげで目の前ぐらいは明るくなるが、そこから先は全く闇である。木々を切りつけ下へ下へと降りていく。

「あっ?」

 今たしかに茂みの影でなにか動いた。目を凝らしそちらへ恐る恐るライトを向ける。これもだめだった。

 ダイオードライトの明かりに驚いたイノシシが襲いかかってくる。

「あぎゃ!?」

 慌てて突進をかわし、アルバートはしっぽを巻いて逃げていった。

「さ、散々な目に…」

 アルバートは少し開けた月明かりの届く場所に出てくる。この一連の流れはあまりルリたちには見せたくない。アルバートは息を切らしながら火を焚いて、手頃な場所に倒れる。怪我をしたり走ったり迷ったりでよほど疲れたのか火の番もそこそこにアルバートは寝入ってしまった。

 煙が空へと舞い上がった。

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