女戦士にすぐなつく…の2
アルバートはまだ来ない。キーウィが様子を見に行く、と珍しく気が利くようなことを言うがルリは許可を出さなかった。
「行き違いになったら時間かかりますし…それに…」
「それに?」
迎えを寄越したら反省させる意味がないのではないか。アルバートは聖騎士。軽口を叩こうとも心は清く正しくあってほしいというのがルリの独りよがりな願いであった。
だから今回、嘘をついたこと…というより女の子に覆いかぶさったことがなんとなく許せない。
(うん、女の子に甘くても、すぐに手を出しちゃうのは良くないですよ。)
「これはアルに課した試練なので。」
ひとまず試練という都合のいい言葉で濁しておいた。
「なるほど。」
キーウィは納得したようだが、本当に意味がわかっているかは怪しい。
「下山ルートを通る場合は、もう少し時間がかかりますよね?」
「そうでしょうね。…待っている間、先にお昼にしましょうか。」
キーウィに荷物番とアルバートの合流街をさせルリとフリティアは売店に向かった。
麓の休憩エリアには様々な売り場があり、飲食スペースだけでなく、お土産のコーナーも充実している。先に恋愛成就のお守りを神社で買ったが実はここでも似たようなものが売られている。こちらのは商業用なのでデザインも可愛らしく5、6種類の選べるストラップ型アミュレットである。
「意外といろいろありますね。」
フリティアもルリの横から並べられた様々なストラップを眺める。樹脂でできた頭だけでかいミニチュアガイコツや、合金製の龍をまとった剣などのミニチュアがぶら下げられていた。
当然女子二人はアミュレットにしか気が向かない。
「……お昼だけ買っていきましょうか。」
あまり目ぼしいものがなかった。お土産コーナーのクッキーを一箱と四人分の軽食を買ってキーウィのもとへ戻った。
「まだ帰ってきてないんですか?」
それなりに時間を潰したつもりだが、アルバートは到着していなかった。キーウィは肩をすぼめてわからない、と首をふる。
「困りましたね。ここで立ち往生とは。」
「もしかして…私が間違ってたのかな…」
ルリは悲しそうに肩を落とした。
「まさか!ルリ様のされたことは正しいですよ。お昼を食べたら様子を見に行きましょう。往復の切符ぐらいお金は出せますから。」
先程、キーウィが同じようなことを言った時は却下したのだが、キーウィ本人があんまり気にしていないようなので、フリティアは続ける。
「試練は今回は保留ということで。また日を改めましょう。」
「はい…」
ルリは力なく返事をした。ドヨドヨとあたりに強い圧がかかって息苦しい。悲しみのマナであった。