女戦士にすぐなつく…の1
第二部開幕!
<女戦士にすぐなつく>
ロープゴンドラで海神の社から麓の休憩エリアまで先に戻ってきたルリたち3人。置いてきたアルバートもおそらくゴンドラで追いかけてくると考えたので、近くの休息スペースで一息つく。
フリティアはルリの座る部分だけ椅子のホコリを払ってハンカチを一枚敷いた。
「なにかお飲み物を?」
とルリをその場に座らせながらあれやこれやと準備する。
「ティア、そこまでしなくても。」
フリティアの行為をありがたく思いつつ断るが、少し寂しそうな顔をされたので、
「お、お茶を一杯…」
しかたなく流されてしまった。フリティアは張り切って飲み物を調達しに行く。
「かしこまりましたわ。」ととびきりの笑顔の後、
「貴様はその場を離れないように。」
と冷たい瞳でキーウィに指図をして意気揚々と売店まで意気揚々と走っていった。
「フリティアさんって面白い方ですよね…。」
去っていったフリティアの背中を見つめながらキーウィがつぶやいた。ルリもそれには同意する。
「私には優しいんだけど…みんなとも仲良くしてほしいです…。」
「まあ、なんとかなりますよ。」
キーウィはこういうとき本当にいい加減である。たしかにルリ以外は大人同士なのである程度折り合いをつけて接することもできるが、ルリの言わんとすることは、もっと親密になって欲しいというところである。
(アル…早く戻ってこないかなあ…)
怒ってその場においてきてしまったことを少し反省した。
「お待たせしました!」
案の定二人分の飲み物しか持ってこなかったフリティア。ルリは見かねて注意をする。
「ティア、あの…こういうことはだめだと思います。」
「えっ?」
フリティアはキョトンとする。
「私達はみんなで旅をしているんですから…皆平等に扱わなくちゃ。」
「も、申し訳ございません…ではこれはルリ様のものと私のものということで…」
しおらしく片方の瓶を開けてルリに差し出し、もう片方を自分の手元に引き寄せ、ぐいっと飲んだ。
「お心遣いありがとうございます。私が飲まずにいることがルリ様のお心を煩わせることになるとは…。」
「えっ……それ、キーウィ用のものだったんですか…?」
「そのつもりでしたが。」
グビグビとあっという間に飲み干してしまった。
次に目指すのは花の国家ラルド。この時期は気候も穏やかで遠くから観光客が大勢押し寄せる。特に海に面した白と砂色の眩しい首都の街並みが人気である。なんでもラルドの中心地には願いを叶える魔法使いというのがいるらしく、冒険者はおろか、一般人もその姿を一目見ようとこぞってはるばる世界各地から集まってくる。
「そちらにも神殿があるみたいですからね。」
海がみえる街に天神の社があるらしい。ここと交換したほうがいいのではないか。
「でも何と言ってもあそこは料理が美味しいですかね。」
フリティアが味を思い出すように口を動かす。
「ティアは行ったことがあるんですか?」
「ええ、昔。お母様と。」
へぇ、とルリが興味深そうにフリティアの話を聞く。フリティアもその期待に答えるように次々とラルドの都の話をする。
「工芸品が人気でして。そのときに買ったものがまだここにあります。」
と翡翠の装飾のブレスレットをルリの前に出した。昔買ったと言う割には保存状態がよく、金縁の輝きも衰えていない。ルリもそばに立っていたキーウィもその逸品を覗き込んだ。
「高そうっすね…。」
「はぁ…貴様はすぐ金の話か、全く…ルリ様のようにもっと純粋に見とれなさい。」
豪華ながらも愛らしいデザインに目を奪われているルリ。
「でも巫女様のようには流石に。」
恥ずかしいとでも言いたげなキーウィの発言に気づいて、ルリは前のめりになっていた体を正した。ついでにつんとすまし顔になる。
「ルリ様、こちらを気に入られましたか?」
「い、いえ。」
「お気に召したならこちらはルリ様に差し上げますよ。」
ピクリと体が浮いたが、キーウィにああ言われた手前、「いえ、お気になさらず。」と欲しい気持ちを押し殺す。
「ふふ、そんなことおっしゃらずに。」
とブレスレットをつけるため、ルリの手をとった瞬間。
「びゃっ!!」
フリティアはその場で仰向けにすっ転んだ。
(わ、忘れてたぁ…)
まだまだ二人が打ち解けるまでは長そうである。