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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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嘘つき騎士を置いていく…の6(終)

 アルバートが気絶しているうちにカイたちとここで分かれることになった。

「貴重な経験ができました。ありがとうございます。」

 去り際まで彼らは丁寧である。苦難を乗り越えて各人が強くなれたと感じていたのだろう。離れる彼らの足取りは勇ましかった。リアは振り向いてもう一度ルリに警告した。

「やっぱりアルってば、けだものっぽいから気をつけて。」

 なんだか最後までモヤモヤとした気持ちがリアは治まらなかった。

(……早くカイのとこに戻ろう。)

「それじゃ、ルリ様たちもこの先お気をつけて。」

 少しばかりのそういうセリフが出るまでにはリアも成長していた。

「ルリ様、私達も山を下りましょう。」

「次の街へ!」

 フリティアとキーウィが張り切って荷物を持つ。

 ルリは未だ起き上がらないアルバートを揺する。やはりずいぶん強く打ち付けたようでまだ目をぐるぐると回していた。

「アルがまだ起きないんですが…。」

 とルリは言うがフリティアは首を振った。

「置き手紙でもして後から追いかけさせればよいでしょう。禊です。禊。」

 それでもアルバートを置いていくのは気が引けるようで悩んでいるルリ。

「ルリ様、家来の不徳を罰するのも必要ですよ。嘘をついて、理由はあれど女性を押し倒すなど…」

「羨ましいので反省してもらいましょう。」

 キーウィは呆れられた。だが、フリティアの言うことにも一理ある。

「では。」

 とルリは買っておいたお守りの一つをアルバートの首にかけた。その中に手紙を押し込んでおいた。

「……下りも長い道のりになりそうですね。」

 ルリは目の前に続く山道に視線を落とした。だが本人としては望むところである。

「みなさん、出ぱっ…!」

「帰りはあれで行きません?」

 気合の号令に水を差されてルリはずっこけた。空気を読まずキーウィが指をさした先には麓へ直通のゴンドラ乗り場があった。

「し、しかしこれは試練…」

 ルリは当然ためらう。だが今回は珍しくフリティアもキーウィに賛同した。

「ルリ様、昨日から働きっぱなしでお疲れでしょう?おみ足もほら、今も少し震えています。」

 確かに小休止はとっていたが、最後のマナを具現化させるのにかなりの精神力と体力を削ぎ取られた。一晩地べたで寝た程度ではそこまで回復はしない。

 トントンと頬を指で叩いて悩んでいたようだが、ルリも今日ばかりは折れてしまった。

「では改めて…ゴンドラ乗り場へ出発!」

 おー!と従者二人が腕を振り上げる。それからゆうゆうと三人で乗り場の窓口へ歩いていった。

「ところで、巫女様。」

「なあに?キーウィ。」

「さっきの再現はアルさんに自分もしてもらいたかったからやらせたんですか?」

 ルリの平手打ちが炸裂した。


「もし…もし…」

 ルーキーたちは次なる道をゆく途中でメジスティ産の長い紫ローブを着た一団に声をかけられる。

「はい、なんでしょうか?」

 頭の祭司を示す冠を深くかぶっているせいで一団の表情は全く見えなかった。中でも一番背の高い者が前に進み出てリーダーに頭を下げる。

「我々とある人を捜しているのですが。」

 声色から男性だとわかった。

「はあ。」

 大男は胸元から一枚の写真を取り出す。微笑む少女の一枚絵。ルーキーたちは「ああ。」と顔に出す。

「ご存知ですか。もしよろしければ、我々にどちらでお会いしたか教えていただけますか?」

 リーダーが話そうとしたとき、後にいた魔法使いが割って入ってきた。

「2日前、湖畔の街よ。」

 急に出てきた少女を男はじろりと眺める。まるで相手の内側を読むような仕草に、少女は少しすくんでしまった。

「……有力な情報、ありがとうございます。」

 大男は腰を深く折りたたんで丁寧すぎるほどのお辞儀をした。そのまま後の者たちに何かを告げて一団は少年たちを通り過ぎていってしまった。

 足音すら聞こえない、なにやら不思議な行軍であった。


 アルバートがようやく目を覚ますと、あたりに誰もいないことに絶句した。

「あんにゃろ…放置しやがったな!?」

 だが捨てられたとは思えない。

「多分…あいつ、フリティアの提案だろう…ルリがこんなことするとは思えない。キーウィは多分何も考えてない。」

 ぶつぶつと腕を組んで思案する。ひとまず自身の持ち物でなにか無くなっているものはないか確認をした。運のいいことに草むらに倒れていたおかげか、何者にも気付かれなかったようである。

「ふう…」

 ひとまず安心したアルバートは自分の首にかけられたお守りに触れた。

「……『恋愛成就』…なんで…?」

 色も薄い桃の生地と金糸の刺繍で女性をターゲットにしたものなのは間違いない。この小袋のアミュレットの上部が緩んでいた。

 アルバートはそれを丁寧に開くと一枚の紙が出てくる。なるほど、合流させるつもりはあるようだ。

 置き手紙を開いてその内容を読んだ。

[反省してくださいね。先へ行ってます。ルリより]

「…………いや、どこへだよ!!」

 こうして彼らの世直しの旅はまだまだ続くのである。

第一部 完結

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