嘘つき騎士を置いていく…の4
目を再び開けたとき、海神を祀る社の本殿の奥の方に八人の男女は戻っていた。
「あー戻ってこれた…」
「一時はどうなることかと。」
「貴重な経験をしましたね!」
冒険者たちは口々に互いの健闘を称え合う。
「………えー、ここは?」
キーウィはあたりを見回す。静から石造りの空間であった。そして背後にある大きな像に気付く。
「何だ、女神像の裏かぁ、ここならたしかに出てくるところ誰にも見られないですね。」
「そうですね………ん?」
ほぼ全員が固まった。像の裏側ということは、つまり。
「えっここ立入禁止じゃないですか!?」
ルリが慌てたのと同時に警備の人に見つかった。八人は本日の営業を終了した海神の社の外に追い出される。
「全く、近頃の冒険者って奴らは…常識がなさすぎる…」
ペコペコと頭を下げて迷惑をかけたことを謝った。腹の虫が収まらなかったようで謝るくらいなら最初からもっと考えて行動しろとひたすらに怒られた。外はもう夜だったがもちろんこんなに失礼なことをした人たちにはなんの温情もない。「冒険でもしてきたらいかがか」と手持ちライトを2つほど投げつけて夜の山道に放り出された。
「よし、八人で行けばなんとかなるでしょう。行きましょう。」
カイたちはやる気に満ち溢れているが、アルバートたちは首を振ってシートと寝袋を引きずり出す。
「森の中で一泊は危険では?」
だからこの社付近をキャンプ地にしようとしている。それに人が多いので交代がしやすい。魔法使い三人は優先的に睡眠を取るように言われた。以降三人ずつ交代で見張り番をすることになる。普段から睡眠の足りないアルバートやキーウィもつかの間の休息を取ることができた。
ルリの見張り番のとき、一人明かりのそばに腰を掛けていると、リアが近づいてきた。
「ルリ、様?ちょっと言っておきたいことが。」
「ルリでいいですよ。」
ルリは微笑む。
「あの、アル…というかあの男のことなんだけど。」
木陰で座りながら寝ているアルバートを指さした。もしかしたら起きるかもしれないと、リアは額を寄せてルリに話す。
「あの人の事あんま信用しすぎないほうがいいわよ?嘘つくし。」
「…ううんでも…確かに嘘ついてたけど…」
リアは語気を強めて警告をした。
「ルリはウチのと同じように人を信じやすそうだから。いつか襲われちゃうよ。」
「ア、アルはそこまでひどいことはしないですよ!」
ルリは必死にアルバートの弁護をする。確かに胡散臭かったりいい加減だったりすることもあるが、根は優しい人だ。少なくともルリはそう思っている。
「私…その、襲われかけたし。」
「……ぇ…」
嘘ではないがそこまで真実でもない。しかしそこそこ根に持ってたので仕返ししたかった。それだけのことである。しかし、ルリの表情の曇り方があまりに激しかったのでリアは慌ててフォローに回った。
「あっ、でもなんていうか、こういう危険もあるんだぞって言うお節介的なことも言ってたから。多分本気で私をどうにかしようとは思ってなかったんじゃないかも?うん。」
「あ、明日アルにきいてみます。」
まああの男ならなんとかごまかすだろう。リアは思いがけずパーティの和を乱し過ぎてしまいそうになり冷や汗を垂らしていた。