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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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嘘つき騎士を置いていく…の1

 心なしか神殿の周りに光が差し込んできたような気がする。あたりはまだ水浸しではあるが、一切の汚れを取り去ることができた。一仕事終えた魔法使いたちは持ってきていたシートを敷き、その上でしばしの休息をとる。

「ありがとうございます。」

 自慢のぷにぷにした水球を作業にあたっていた者にルリが手渡していく。初めて見る物体を目の前にして首を傾げてしまう。

「それは簡易の水筒のようなものです。」

 筒ではないが。

「そのまま口の中に入れてぷちっと潰せます。口に入れるのが嫌な場合は針などで小さな穴を開けて、少しずつ押し出すようにして中の水を飲んでください。」

 フリティアは構わず口の中に放り込んだ。言われたとおり歯で噛み潰して水分補給をする。喉がごくごくと動いていた。

「その膜は飲み込んでしまっても体に害はありません。」

「これは…魔法の類のものですか?」

「そうです!」

 シズの問いかけにルリが胸を張って答える。カイのパーティメンバーはまだ半信半疑でつんつんと指でつついたり、縦に持って玉の真上に針を刺そうとしたり、おっかなびっくり取り扱っていた。

「ところで、ルリ…さん?」

「はい、なんでしょうか。」

 クリッとした目をリアに向けて微笑んでくる。同性から見ても愛くるしいその仕草がリアを妙な気分にさせた。

 とはいえ本題はそれではない。

「あなたたちは、何者なの?」

 先程から見せてくるアルバートが探していた人物の魔法技術の高さ、出力の強さ、あと年齢差。どれを見てもこのパーティの成り立ちがいまいちピンとこなかった。

「ん、えっと…」

 口ごもるルリ。後ろめたいのではなく、なんと言っていいのかわからない、とでもいうのだろうか。

「俺らはこの世界の神々を探してるの。」

 いつの間にやってきたのかアルバートが側から話に割り込んできた。

「その理由は?」

「ルリが見たいって言うから。」

「ええ…?」

 リアも神々の話は聞いていたが、おとぎ話だと思って信じていなかったし、仮にいたとしても会おうとは考えもしなかった。

「そ、それだけで旅してるの?」

「そうだぞ。」

 アルバートは嘘を言っているようには見えない。妙な違和感があるが、それ以上は話してくれそうもなかった。

 実際に神の姿を目の当たりにしてしまうと、そういう無茶苦茶な理由でも旅の理由としては間違ってない気もしてくる。

「アルたちはルリさんの護衛ってことね。」

 ひとまずこの場は納得した。

「『アル』…?」

 ルリが反応する。さっと立ち上がりアルバートのもとに駆け寄った。

「ん、どうした。」

「ア、アル…その、もうあの女の子と仲良くなったんですか?」

 なんだかそわそわとしている。そこへ見回りをしていたキーウィが戻ってきた。

「アルさん、こっちは大丈夫そうでしたよ。」

 のんきにカイと笑いながらやってくる。

「えっ、キーウィにも『アル』って呼ばせてるんですか?」

「え、そうだけど…。」

「むう…私だけだと思ったのに…。」

 ぶつぶつと恨み言を言って不満がありそうな様子。またもやあたりが曇り始める。

(やば…)

「まあ待て、ルリよ。これには理由があってだな。」

 ポンポンと彼女の肩を叩いて、これまでの経緯を話そうとした。だがルリは取り合わない。

「…アルは親しい人しか呼ばないからって言ってたのに…キーウィは、まあわかるけど…新しい出会ったばかりの女の子まで…」

 この二人のヒソヒソと行われる妙な会話をリアは聞き逃さなかった。

「アル、今の話はどういう意味…?」

 リアのなんとも言い慣れている感じが余計にルリの顔を雲らせる。

(待て待て、本名明かしてないだけだったのが余計怪しまれる要因になってるじゃねえか…)

「いや、それはだな…」

「アルバート!なにやらルリ様を悲しませていますね!」

 フリティアが躍起となって斧を振り回してくる。

「『アルバート』?あなた……まさか、今まで嘘を?」

 険しい瞳で年下のルリとリアに睨みつけられた。

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