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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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八面六臂のしたり顔…の20(終)

「では皆さん、ご協力をお願いします。」

 ルリはそういってカイたちに深々と頭を下げる。彼らとは同い年かルリの方が少し上ぐらいだろう。落ち着いている立ち姿からは先ほど錯乱して大暴れしていたことを微塵も感じられない。異国情緒あふれる神秘的な雰囲気に四人の少年少女は少し気おされてしまうぐらいであった。

「一時はどうなることかと…」

 アルバートたちは背負っていた荷物をようやく降ろして一か所にまとめる。ただし、カイたちとは場所を別にした。こうやれば荷物がまぎれない、というのと盗難対策である。カイたちはそんなことをするような集団ではないのだが、警戒を怠らないアルバートにとっては当然の行動である。

「なんか、ここまで連れてきてあげたのに感じ悪い。」

 理解はできていても、あんな事までされたリアはそう簡単に腑に落ちなかった。

 各自が黙々と汚れに汚れた神殿の様子を眺めながら掃除の準備を始めようとするが、用意できるものといえば雑巾ぐらいしかなく、8人でもこの広さはいつまでかかるかわからない。

「水に濡れていなければ私のスイーパーが使えるのですが…」

 フリティアが持っている機械でできたスイーパーは水を吸い込むと後始末が大変だそうだ。

「やはり一つ一つ丁寧に磨き上げるしかないんじゃないでしょうか。」

 カイたちの意志は立派である。付き合う必要もないのに自ら過酷な道へ足を突っ込んでいく。

「あれよ、またプレッサーを使えば…。」

 リアのものとルリのもので二台ある。だがアルバートが却下する。

「だめだ、あの小さいのでこの神殿の壁を何度も何度も吹き飛ばすことになるんだから二人の負担がでかい。」

「じゃあどうすんのよ。」

 あれもダメこれもダメでイライラしている。

「いっそもう一回大雨が降っちゃえばいいんですけどねえ。」

 キーウィの奴は何を言っているのか。とアルバートが呆れかけた時ルリが手を打った。

「それです!」

「え、なんだって?」

 誰かが小さな雨雲を作り、誰かが風で動かし、誰かが流れた水と汚れを分ける。分かれたきれいな水を雨雲に戻されて風に乗って、残った者たちが泥や汚れをかき集めて掃除する。

「魔法を仕えるものが3人いるんですからきっと大丈夫!これならいけると思いませんか?」

 とルリは全員に向かって提案した。

「プレッサーと同じじゃないか?3人になるから負担は多少減るだろうけど…。」

 アルバートの疑問にルリは問題ないとでもいいたげな余裕の表情で首を振る。

「魔具は日用品なんです。だからそんなに疲れはしません。…ただ、プレッサーは汚れを弾き飛ばすもので、掃除どころか一か所に汚れがまとまってくれないんです。外ならいいんですけど屋内で使うには適していません。」

 天井のない神殿なので外も中もあまり関係なさそうだが理屈はわかった。

「それに私ちょっとの魔法を何度も使うのは苦手で…」

 ルリはくるくると人差し指を回して恥じらう。大技が得意なルリにとってはどちらの方が楽であるかは明白であった。

「雨雲が私、風を起こして雲を動かすのが…えっと…」

「じゃあ私やる。」

 リアが手を上げてルリの横に並んだ。リアは彼女が並大抵の魔道士ではないことを見抜いていた。だが自分も負けてはいない。微調整が必要で、風を操る順風耳の扱いにたけた自分がこの作業に当たることで周りにアピールするつもりであった。

「では、分離は私が。」

 とシズも位置につく。

 魔法を使えるもの3人がそれぞれ準備のため杖をかまえた。フリティアとバーナードは雑巾を用意してその後ろにスタンバイした。残りの戦えるもの3人は、周囲に危険がないか警戒に当たる。

 やがて魔法のお掃除が始まった。ぐるぐると杖を回すと何もない空中に水の粒が集まり急激に冷えて靄が出来上がっていく。絵に描いたような雲が出来上がりチョンと、杖の先で雲に触れると土砂降りの雨が発生した。ルリの前だけに。雨を絶やさないようルリは集中して雲を見つめている。そこへリアが加わって、雲をそっと壁の方へ押すようにかすかな風を起こした。雨を降らせながら壁をびしゃび者と濡らす。その雨雲のシャワーに汚れが流されてシズの足元へ流れてくる。その濁った水の流れを注視しながら、泥の粒と水の粒に分けて水の粒だけは雨雲に戻されていく。壁についた分の水があるのでどんどん雨雲が小さくなっていくがそこは大丈夫。真ん中の池から水を借りて、すぐに雨粒で満たされた雲を整ええる。

 そうして3人が集中して集めた泥をフリティアはスイーパーで吸い取り、バーナードはぞ雑巾で拭きとった。

 その地道な作業が終わったころには噴水の水が干上がっていた。

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