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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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八面六臂のしたり顔…の7

 マジックダイアルがカチカチと時刻を打つ。太陽も傾き始めた。

「…遅くねえか?」

 参拝客の数が減り、あたりをうろついている冒険者たちのほうが目立ち始めていた。人影もまばらになってきたので社までの通り道が見渡せるようになってきている。

「キーウィ、これ以上は無駄かもしれない。ルリたちを急いで探すぞ。」

 いくらなんでも何かあったに違いない。平穏な空気とフリティアの強さに状況を見誤ってしまったと感じる。マジックダイアルを手に持ち、最後に彼女たちを見た本殿へアルバートとキーウィは走った。

 本殿前にあった行列もすっかりなくなり、女神像のもとまですんなり通れるようになっていた。男二人はくまなく周りを捜す。海の女神の石像の鎮座している前を素通りし、そばにあった売店の従業員にも聞いてみる。

「こう、なんていうか…あんたが今着てる服みたいな、一枚で羽織るような白い服の女の子なんだけど…」

 身分や目的まではわからないはずなので、旅の仲間たちが受け取っている写真をこの売店の男性にも見せる。少し考える素振りをしている。

(だぁっ…男ならこんな子見れば忘れるはずないだろ…!)

 それはアルバートの嗜好の問題である。

「あ、ここに来たかもしれません。」

「本当か!」

 アルバートは身を乗り出した。

「はい、キレイな女の人と二人で。4つほどアミュレットを買われていきましたね。」

「多すぎだろ…。」

 ともかく情報は情報である。この売店員がフリティアにしか興味が行かなかったのがなんだか癪だが、有力な情報を得た。

「それでその後はどこへ?」

「そのまま本殿を出られたかと。」

「いつ頃?」

「昼過ぎたあとだから…二時間ほど前でしょうか。」

「よし、悪いな仕事中。ありがとうよ。」

 アルバートは意気揚々とキーウィと合流する。

「……なにしてんだ。」

 キーウィは女神像の前にひざまずき、手を合わせていた。

「二人が見つかりますようにと海神様に祈りを捧げてました。」

「なんでもう神頼みなんだよ…」

「それで何かわかりました?」

 ケロッとしてキーウィが訊ねてくる。アルバートは間違いなくここに二人が来ていたことを伝えた。二時間も前ならもちろん合流できているはずだ。本殿から先程食事をした軽食屋まではそれほど離れていない。付近に身を隠せるような場所もなく、ひと目も多い。誘拐しようものなら、ルリの護りが発動して誘拐犯には激痛の天罰が下る。

「つまり、自然にいなくなった、と。」

 本来ならそんなことはありえないが、そうでなければ考えようがない。

 では何によって自然にいなくなった?

「催眠術で二人を操って…。」

「それはねえな。」

 ルリは魔導の類に耐性があるし、フリティアがそう簡単に近づいてきたものに気を許すとは思えない。

「じゃあ、何かナンパされて…」

「いや、フリティアがいるから無理だろ。」

 昨日の夜だってあの調子だった。フリティアは斧を肌身離さずバトルアックスを背負っている。ただでさえ男が近づくだけで、睨みつけてくるのだ。

「うーん、睡眠薬をかがされて…」

「どうしてキーウィはそういう方向しか考えられないの?」

 知識の偏りというよりキーウィの嗜好が垣間見られた気がする。

「じゃあアルバートさんはなんだと思うんですか?」

 食って掛かるキーウィであるが、実はアルバートも自分で思いついた少し恥ずかしい答えしか用意していない。「このあたりに聖域の入り口がある」というのは決め手にかけるのだ。

 だがその決め手が向こうからやってくることになる。

 カチカチとマジックダイアルが動いている。しかしどうもおかしい。ぐるぐると針の方向が定まらず、故障したかのような怪しげな挙動だ。

「これは…?」

「アルバートさん、これ、もしかして…二人はもう異界に行っちゃったんじゃないですか!?」

 答えを先に言われた。

 あまりの驚きの声に付近にいた他の冒険者パーティが男二人に反応を示していた。

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