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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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八面六臂のしたり顔…の1

 この世界に坐す四柱の神々。世界創造においてそれぞれが、海と空と地と、それから文明をもたらしたとされている。

 ルリたちが今いる宿場町から少し離れた山の中腹に、海神の祭壇がある。山奥ときくとイメージでは大地か、天空の神だろうといいたいところだが、どういうわけだか海神が祀られている聖域が存在している。

 そこは普段であれば登山コースの一部に組み込まれていたり、参拝すれば恋愛運が高まるなど言われ一種の観光スポットと化していたり、おおよそ神聖な儀式を行うような場所として扱われてはいない。

 しかし、マナを操れる魔術師、とりわけ巫女のような強力な存在であれば聖域にあるといわれている異界へと足を踏み入れることができるそうだ。異界に入ってきたという報告は数々寄せられているもののどの報告も噛み合わず、マナを操れない者たちにとっては夢見がちな虚言、妄言の類にしか聞こえなかった。

 だが同じく夢見がちな冒険者たちのほとんどはその話を信じこの異界へと到達することを目指している。故に冒険ブームの今、魔術師は貴重なのだ。

「このバンは海神前行きです…。」

 麓の街にとまる観光用大型バンに乗り込もうとするアルバート。だがルリが大げさに首を振ってその行動を阻止しようとする。

「ルリ、これならすぐ着くだろ?嫌がる意味が分からん。」

「前にも言いましたが、この旅は試練です!自分で歩いてこそです!アル、我慢してください!」

 この街から直接歩いていくとなると登山客ですらしんどいルートになる、いくら健脚の持ち主でも、登山コースとの入り口までは別の移動手段で向かうのが普通だ。

「ええ…」

 自分がだらしないかのように諭されるのがアルバートはなんとなく納得いかない。

「おやおや、騎士殿は今日もルリ様にご意見ですか、いい御身分ですねぇ?」

 すでにご自慢のバトルアックスを肩に担いで睨みつけてくるフリティア、キーウィも歩く気でいるようだ。

「おいマジかよ…フリティア、お前ならわかると思うが、ルリ…を無駄に疲れさせたくはないだろ?これから大事な役目があるんだから。」

 そう言われてルリを慕うフリティアは少し悩むようなそぶりを…ちっとも見せやしなかった。

「はぁ?巫女様が白いといえば黒いものも大体白なんですよ?」

 大体と付け加えてしまうあたり、若干のずれがあることは認識しているのだろうか。

「アル、この中では最年長ですからすぐ疲れてしまうのはわかりますが…」

「まっ…?!待てよ!おっさん扱いすんなよ!」

 アルバートはまだ20代である。

「街中でどうでもいいことで叫ぶんじゃありませんよ。オ・ジ・サ・マ。」

 同じく20代前半のフリティアがニヤニヤと侮蔑の笑みを浮かべている。完全にアルバートが悪い流れが出来上がった。

「海神前行発車いたします。お乗りになりませんか?」

 出発時刻を過ぎても、入り口前でもめているこの集団に向かって運転手が声をかける。

「大丈夫です!行ってください!」

 ルリがにこやかに袖がめくれるほど手を振ってバンを送り出す。何の感情もなく運転手はバンを出し、その後輪から舞い上がった土煙がバンの排オイルの臭いと混ざっで辺りに広がる。

「アル、旅はこうでないと。」

 先頭を歩くアルバートの背中にルリが励ますようにして声をかける。道路側の隣にフリティア、後ろにキーウィで一行は巫女様完全防御の構えである。

「うーん、やっぱりこの辺りは涼しげでいいですね。」

「本当です。出来ればルリ様と二人っきりになる時間が欲しいんですけど…。」

 チラチラと定期的に熱い視線をフリティアがルリに送るが、まだルリには完全には伝わらない。麓のリゾート街で手に入れた無料配布の『海神山歩き方ガイド』を眺めてフリティアに答える。

「神の社のあたりはいろいろあるって聞いてますし、お仕事が終わったら見てみたいです。」

「はっ!はぃぃ…!一緒に!ご一緒させてください!」

 必死である。

 ルリが、もちろんと頷くのでフリティアは天にも昇るような気持であった。

「フリティアさんってなんでそんなに巫女様のことが好きなんですか?」

 水を差す輩は必ずいるものである。キーウィは何も考えずフリティアに問いかけた。

「可愛いからに決まってます。」

 フリティアが反射で即答をする。大真面目に彼女がそう答えるので隣で聞いていたルリの方が照れてしまう。

「ティ、ティア…。」

「うふふ。」

 和やかに徒歩10時間かかる道をひたすらに歩いていった。バンでも1時間。しかも到着した時点でそこはただの登山ルートのスタート地点である。まだその先がある。アルバートは野宿の覚悟をした。

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