少女のことも受け入れそう…の7
少女に叱られるのももう慣れっこである。しおらしい顔を作って両膝を折り彼女の前で座せばいいのだ。小さくうなずくことも忘れない。眉をひそめて反省しているという雰囲気を出せれば完璧である。
「まったく、キーウィのためと言ってもですね。アルはそういう勝手な行動が多いですよ。わかってますか。」
ルリは仁王立ちになって大の大人を責めている。夜が明けて、キーウィがポロッと昨晩の出来事をこぼしたからこうなった。
怒られる当人はあまりそういう気分ではなかったのだが、ルリを落ち着かせる一番の方法がこれなので甘んじて受け入れるしかなかった。
(………)
ルリの話を聞いたふりをしながら、今の意識はカノの方に向いていた。
昨日の晩あれだけ言っても聞き入れる様子はなかった。自分を慕ってしまったが故にしなくていい苦労をしている。
(あいつを解放してやらないと…)
自分でまいたタネである。彼女への責任を感じていた。その深刻さが表情に出ていたのだろう、ルリにはアルバートが珍しくちゃんと反省しているように写った。
「ま、まあ?アルがそうやってたまに優しいのは、その。いいところではあるんですけど!」
「ルリ様、今は叱責するところですよ。」
ルリのお説教が終わったあと、フリティアがいつものようにアルバートに追い打ちをかける。
「ルリ様があれだけ言ってたのに…あなたちゃんと聞いてましたか?」
「…ああ。」
アルバートは生返事をした。
「なにか考え事をしている…?隠し事しながら行動するといいことないってわかってますよね。」
「…わかってる。お前らに迷惑かけるつもりはねえよ。」
フリティアはアルバートに昨晩何かあったのだけは悟った。
「…それは自分一人で解決できるのですか。」
アルバートは頭をかく。フリティアの発言を好意的に捉えると手伝ってくれる意思があるということだ。だが、彼が今抱えている問題は今後を考えるとどうしても一人でやるしかない、
「…しばらく一人の時間をくれ。次の街に先に行っていていいから。」
「それじゃあ今回と同じでしょうが。」
「お前から口添えしてくれれば、ルリも納得するだろ。」
意外な申し出にフリティアは呆気にとられる。
この男はルリが何を心配しているのか本当にわかっているのだろうか。フリティアはアルバートを睨みつけた。
「これが一番いい解決法なんだよ。あとから必ず追いつくから。」
「二言はありませんね?」
手に斧を取りその分厚い刃をアルバートにあてる。彼はピクリともせず頷いた。
「あなたの指示で動くのはこれっきりですからね。」
フリティアはルリの方に戻っていった。