少女のことも受け入れそう…の4
ずっとアルバートにつきまとっていたカノだからこそ彼の発言に嘘がないことがわかる。わかるが、もう一度聞き返した。
「うっそだぁ…師匠、盗み、やってないなんて…」
「本当だ」
当然のように盗賊時代に培ったワザは使っていた。だがそれはルリを守り、ルリを先に進ませるためであって自分の稼ぎのためではない。
今回、キーウィから鎧を盗んで換金したものを追い詰めに来たのも、鎧以外に重要な書類やら身分のわかるものやら、身元と目的がバレていないか確かめるためでもあった。どうやっても目立ってしまうルリの力を制御して、隠し通すには周りのものの努力が必要なのだ。
「じゃ、なんで傭兵なんか?目的はあるんでしょ。」
「悪いが探りを入れようとしてもこれ以上は掴ませる気はないぞ。」
これは彼の盗賊の技術である。
そうやって技術は捨てていないせいで、カノは不機嫌になった。
「ジブンを置いてって…なんですか、それ」
「何度も俺に付きまとわないように警告してたし、何度もまっとうに生きるよう伝えてたと思うけどな」
「師匠、あなたのマネをすることが私にとってのまっとうな道だったんですよ」
腰掛けるベッドのシーツを千切れそうなぐらい握った。
「…悪いがな。その金は奪わないでおくから、それを元にお前の愛嬌なら普通の明るい職業につけるはずだから…」
「…ハァッ?」
アルバートも眉をしかめた。薄暗い部屋でも彼女の目が鋭く光り、恨むような泣き出しそうな苦しみに満ちた表情をする。
「ジブンは…」
血が出そうなほど強く唇を噛んだ。