少女のことも受け入れそう…の3
カノは客人を無視してベッドに飛び込む。仰向けになって彼に話しかけた。
「今は何してるんです?」
アルバートの方はそばにあった手頃な丸椅子を引き寄せた。
「傭兵。」
「うっそだぁ。」カノは笑った。
「そんな割の悪い仕事するわけ無いですよね。まだあの旅芸人のほうがいいですよ。」
真の目的にはたどり着かないものの、アルバートの発言には裏があることがすぐに察せられてしまう。
「カノ、いつから気づいてた?」
今度はアルバートが問う。
「あの人の装備を盗んだときから、ですかね。」
カノの発言はアルバートに対して嘘が感じられない。
「つまり、追いやすくしたのも…」
「師匠ならきっとたどり着くと思って。せいぜい途中で気づかれると思ってたんですが、まさか出し抜けるところまでいけるとは思いませんでした。」
「…見事だったよ。」
心底無愛想な表情で一言だけ答えた。だがこう続ける。
「あの街で普通に生きてくことぐらいできたのに何盗賊の腕を磨いてんだよ。」
カノが身を起こして眉をひそめる。
「あれが師匠から教わった生きるスベですよ?」
アルバートは一つたりとも彼女に教えたつもりはなかった。彼が彼女に言って聞かせた考え方、行動理念のすべてを、カノは師匠の生業と同じ道に向かせていたのである。これまでずっと一人で盗みを繰り返し、影に生きてきた。
「こうしてれば師匠にまた会えると思って。」
こういうカノは普通の少女のようなあどけない表情で語る。
「で、いま師匠がいるところがターゲットなんですよね。結構なボンボンと一緒でしたから大口の仕事なのかな?もしよければジブン、師匠の力にーー」
「俺はもう盗みはしてない。」
アルバートは視線を落とした。
これは本当のことだ。騎士号を盗んでからずっと、彼のたち振る舞いは聖騎士である。
「え?」
薄暗い部屋でもわかるほどカノが青ざめた。