少女のことも受け入れそう…の2
ジブンの部屋はここですよ、と背中のドアを叩き、ナイフの柄をアルバートに向けて返す。
「どーぞ。」
戸を開けて、黙ったままのアルバートを自身の部屋に案内する少女。
「そんなに怖がらないでくださいよ。」
口に手を当てて挑発するように笑った。確かに敵意のようなものはなかった。アルバートも諦めるように肩を落として少女の部屋へと足を運ぶ。
狭い宿の一室は彼女の癖か、昔の教えかきれいに整えられていた。
「んくく、鈍りました?」
「カノ。」
アルバートの呼びかけに嬉しそうにカノと呼ばれた少女はうなずいた。
「全く、大陸中探し回りましたよー。師匠。」
小柄でしなやかな体を伸ばしながらカノは再開を喜んだ。彼女はアルバートが置き去りにしていった時とほとんど同じ、黒布で髪や首や腰を隠していた。
アルバートの視線に気づいて、わざと恥じらうようにして両肩を包む。
「師匠ってばやらしい。」
笑顔を絶やさず、むしろもっと見続けてほしそうな素振りである。
「へへへ、どうでした?今日の“お仕事”ぶりは。」
クルルカノ・ドロンゴはかつてアルバートが盗賊業をしていたときにとある事情で勝手についてきて、適当な街でまかれた少女である。
「師匠の業のおかげでここまでこれましたよ。」
屈託のない笑みで、悪びれもせず、これまでずっと盗みを繰り返してきたことを誇る。
「見抜かれちゃうかなあって思ってたんですが、うまくここまで誘導できました。」
アルバートはバツの悪そうな顔をした。