少女が現れ四苦八苦…の8
満月が雲の影に隠れたが、街に連ねられたダイオードライトがまっすぐ輝いて街はまだ明るい。
しかしそれも大通りだけの話で、狭い路地には一つ二つしか設置されておらず、まれに警吏が付近を巡回するぐらいであった。店の看板を光らせてみたり、店内の明かりをこぼしてみたり、路地の酒場は必死に通りの人を誘っていた。
「昼間のところに遊びに行くんですか?」
少し興奮した様子のキーウィ。
「遊びには武器はいらんだろうが。」
皆が寝静まった後アルバートはこっそり宿を出ようとしたが、この日は寝付きが悪かったキーウィに捕まったので、あえて彼を連れ出すことにした。
そのときに武器と防具をきちんと用意するように伝えている。
「オーギさんがすんなり通してくれて助かりましたね。」
もちろんあの時、物音に気づいたオーギは部屋から出ようとする二人を捉えたわけだが、アルバートが何やら耳打ちをしたことにより、そのことを不問にしてくれたのであった。
「本来の目的には沿いませんしルリ様が心配されるので夜明け前には戻ってきてくださいね。」
「約束しよう。」
ルリに勝手な行動を気づかれると大変オカンムリになる。オーギの心配事はアルバートも承知していた。
角を何度か曲がり、街の外側を深く深く突き進んでいく。
「なにか宛があるんですか?」
「キーウィ、今晩中にお前から防具やら盗んだ女を捕まえるぞ。」
ああ、とキーウィは手を打った。
自分のことなのに割と無頓着である。
「え、それって俺のことで腹を立ててくれてるんですか?」
アルバートはそれには答えず静かに前を歩いた。