少女が現れ四苦八苦…の7
盗品を売ってる店だとは言われたくはなかろう。とおおよそ騎士には似つかわしくない態度で値切った。
「大丈夫さ、あんたは損しないぐらいの値段だろ。」
最初から白を切るんじゃなかったと店主が後悔したときには、手に入れたばかりのテアロアの防具一式がすでに買い取られてしまっていた。
街に戻り、二人は宿を目指す。だが、アルバートが道行く人に声をかけていくせいで想定よりも遥かに遠回りをして帰ることとなった。しかし、相方がキーウィである。彼はそれに対して割と好意的であった。なぜなら、
「ちょっと聞きたいことかあるんだけど、いいかな?」
老若問わず大半が女性だからである。
「さっきあそこの子にも声かけてたでしょ」
と袖にされそうになっても、
「一人に一つだけなんだ。悪いが人を探しててさ。」
「へえ?」
それならばと大抵の人は答えてくれる。その後、少し当たり障りのない話をする。店番の娘から果物をもらったりもした。
(こ、これだ…!俺はこれをしたかった!)
まるで立食パーティーでも嗜むように、一人ひとりに挨拶をするように何かを伺っているアルバートの身振り手振りそのワザを、キーウィは必死に目に焼き付けていた。
「ありがとう、明日遊びに行ってみるよ。」
「ええ、お待ちしてます。」
にこやかに、あまり見たことがない爽やかさをまといながら、風を切るように街角に余韻を残していく。
「ははぁ…」
キーウィはすっかり感心しきっていた。そうか、店の女の人はがっつかずとも次の機会を設けてゆっくり話せばいいのか。
「よし…よし…。」
アルバートは紙のメモに何かを書き付けていた。
「すごいですね、みんな不機嫌そうな顔をちっともしなかったですよ。」
キーウィはその覚えがあるのだろうか。
「そりゃナンパじゃねえからよ。」
手に持ったメモの束から目を離さずアルバートが答える。
「いや、でも…ほお。あ、おばあさんにも声をかけたのはなんでです?子どもならまだしも…」
「だからナンパじゃないんだって。」
「じゃあなんのために。」
(こいつの頭の中では異性と話す=下心を持って接するってことなのか…?)
呆れた様子でジトっと眼を曇らせる。
「やられっぱなしは性に合わんからな。」
「???」
その不敵な笑みの答えは、その晩にすぐにわかった。