不審な少女にご用心…の6
キーウィでも純粋に悔しがる時はあるのだ。彼のささやかな人間味を感じて、みなこれ以上の言及は控え口を閉ざした。
「うう…ただ俺は女の子と仲良くしたかっただけなのに…」
青い心を弄ばれたキーウィはしょげる。鎧のことよりもそっちの方が傷ついたらしい。
「というか、お助け料として鎧を持っていくのはちょっと割にあってませんよね!」
「……」
誰も何も答えなかった。
一行は宿探しのため今日たどり着いた街を練り歩く。フリティアはいつも質のいい旅館を選ぶ。最低限の路銀はオパリシアの協会から各地の銀行を通して受け取ることができるが、彼女が選ぶ店は相場よりもだいぶ高額な店が多いのでそろそろ負担が大きくなってきた。そしてさらにこの地は大国ディアマン。首都から離れた街ではあるもののそれでも人口は多く、土地の価格は高く、それに応じて各サービスの提供料が高騰している。
「では今日はここに…」
フリティアが示した宿には平気で男たちの懐をえぐるほど宿泊費が記載されていた。それをこれまた平気な顔をして見せてくるフリティアもフリティアである。
「フリティア、そろそろこの額の宿はきついんだが…」
「男三人一室、一人あたり一晩14,000ですよ?むしろ女性部屋は全額私が負担しているんですから…」
当然のようにルリは宿に関して支払い諸々をする必要がないので、彼女の希望によりフリティアが肩代わりをして払うことになっている。
「ほら、いざとなれば俺らキャンプとかできるんだからさ。枕さえあればどこでも寝られるなら部屋のグレードは多少落としてもいいだろ。」
それにキーウィに関しては装備を整える金も必要である。だが彼女は聞き入れてくれなかった。
「ルリ様をあばら家で寝かせるような真似はできません。もちもちのお肌を保つためにも健康的な睡眠が必要です。」
(せめてコスパを考えてくれ…。)
いままでもちょいちょい不満は上がっていたのだが、その都度ルリを盾にされてどうしても野宿しなくてはいけなくならない限り、ハイグレードホテルを選んでくる。
以前、アルバートがお手頃な値段の宿を見つけてきたらさんざんダメ出しをされた。
「本当に、あなたは効率しか見ていないんですね!ルリ様は高い志のもと旅をしているのですから、衣食住は常に気を配らなくてはいけないんですよ。あなたのように額面だけ見て安心と安全をないがしろにするのは許されません!」
寝られればいいと考えているアルバートとはどうも意見が平行気味である。