不審な少女にご用心…の3
探していた人物がなぜだか鎧をガチャガチャと抱えながら走り寄ってきた。あまりの風体に敵が来たかと構えてしまったが、なんのことはない。キーウィは顔を腫らしながらも無事だった。
一同はひとまず胸をなでおろす。
「皆さん来てくれたんですね、よかった。よかった。」
うんうんと頷き繰り返して、彼もようやく安心したといった様子である。
「まあ、無事で何より…」
ホッとしつつも苦い表情である。それには構わず、キーウィは事の顛末をつぶさに語った。それはもう、一つ一つ丁寧に。
「聞けば聞くほどアホらしいですね…」
「言ってやるな」
しかめ面のフリティアにキーウィはムッとしていかに必死だったかを訴えた。
「結構かわいい子だったからいけないんですよ!もう少し、俺の好みから外れてくれてれば…」
嘘をつけ、お前は女が呼べば誰とでもついていこうとするはずだ。
その場にいた彼の仲間たちは同じようなことを感じていた。
「…キーウィ。」
ルリが目を深く閉じる。
「アルにも先の街で伝えてましたよ、個人行動は控えるように、と…」
後ろ手を組みながら彼の周りをゆっくり歩き回り始める。意味はそんなにないのだろうが、相手を糾弾するときはこのスタイルがよく取られる。
「私達がどれほど心配したのかわかりますか?」
「……は…はい」
他の三人はさほど心配してなかったが、巫女に調子を合わせる。
「キーウィの実力はわかっています。意外と頼りになることも。ですが、いえ、だからこそ。」
ぴたりと彼の正面で立ち止まった。
「しっかり反省してもらいますよっ!!」
ルリは魔具を取り出して、キーウィの腰にさっと取り付けた。
マジックハーネス。一見なんの変哲もない輪っかだが、実は見えない魔力で所有者の持つもう一つのリングと結び付けられている。
力自慢の大男が暴れようと無理やり引っ張ろうと、装着者は所有者から一定の距離以上は離れることができない。目に見えないマナの流れを断ち切ることもできない。加えて所有者からリングを奪うことも難しい。
一定距離以上離れられず、許可されない限り一定の範囲には近づくこともできない。なぜこんなものをルリが持っているか。
「白の街でアルを怒ろうとしてた時に前もって買っておいたんですが…」
その時は指輪のことで有耶無耶になったのである。そしてさらにその指輪が…
「ただアルとはこの指輪でつながってますからね。」
「…さっ!差別だ…!」
雇い主に向かってとんでもないことを言う。とりあえずフリティアにひっぱたかれた。
「とにかく!しばらくキーウィはこの当家で管理しますからね!」