不審な少女にご用心…の2
最後の一人が何も持たずに森の奥へと逃げ去っていった。先端の汚れを軽く拭き取りキーウィは槍を近くの木に立てかけた。
「いやあ、おかげで助かりましたよ。」
散らばっている自分の鎧を拾いながらキーウィは駆けつけてくれた少女に感謝した。
「間に合ったようでよかったです。」
キーウィは改めて少女に向き合った。なるほど、それほど身なりは良くないがどこか知性を感じさせる顔立ちで、幼いながらもしっかりした印象を受ける。ただしキーウィの好みからは外れている。
(もう少しムチムチの子がいいなあ…)
「…」
助けてくれた少女の眼差しがキーウィにすらわかるレベルで一瞬冷めた。
「……ぁえっ、声に出してた…?」
「何がです?」
動揺するキーウィにニコリと少女が微笑む。余計な品定めはやめよう、謎のプレッシャーを受けてキーウィはそっと視線を外した。
「見た感じ、傭兵さんだと思うんですけど…。」
今度は逆に、彼女の方がキーウィを値踏みするような視線を送る。
「誰かとご一緒です?」
「ああ、それは…巫ーー」
「ミ?」
「ーーんなと旅をしてる途中で。」
キーウィは危うく機密を漏らしそうになった自分の胸をなでて落ち着かせた。
「なるほど、やつらに途中で連れ去られてはぐれてしまった感じですね。」
「ははは、ええ…まあ、そんなとこです。」
都合よく想像してくれているので、キーウィは頭をかきながらごにょごにょとしてはっきりとは述べなかった。
「この辺りは盗賊が巣食っていて危険ですよ。私の来た道を辿れば本道に戻れますから。」
そう言って彼女は自分の後の木々を指さした。
「あと、これ、落ちていた鎧はあなたのですよね。」
彼女は散らかった彼の防具を拾い上げてはポイポイ放り投げた。あっという間に両手が塞がる。フルアーマーだと付けなくてはいけないものが多すぎる。自分の両腕にあふれる鋼の具足を目の当たりにして改めてそんなことを考えた。
「おーい!」
遠くから自分を呼ぶ声がする。
「あっ!アルバートさん!来てくれたんですね!」
今度は間違えようがない、聞き馴染んだ味方の声である。キーウィは少女への挨拶もそこそこに声のする方へ走っていった。
残された少女はゆっくりと笑みをこぼした。