不審な少女にご用心…の1
強盗の男は腕に深く突き刺さった短剣を無理やり引き抜き、飛んできた方向に怒りをぶちまけた。
「てめぇ!何者だ!」
「アルバートさん!来てくれたんですね!」
方角的に顔は見えないが投げナイフの柄は見えた。仲間が自分のもとにたどりついたのだと確信した。だが応じた声は聞き慣れない若い女性の声であった。
「なにか不審な看板があったから来てみれば…ずいぶん効率の悪いことしてるね」
(あれ?誰?)
「なんだと?」
怒る男どもをものともせず、少女は不敵にせせら笑う。
「なんだこのガキ」
「まあほっとけって」
「いや俺、肩やられたんだけど」
鼻につく態度だが、所詮相手はまだ年端もゆかない少女である。身なりもそれほど良くないので相手にするだけ無駄だと判断した。
「お嬢ちゃん、お姉さんたちはいまお仕事中なんだ。痛い目にあいたくなきゃその無駄な正義感はしまってどこかに行っちまいな」
女がしっしっと手振りをした。
「だからさ、一人の男相手に五人がかりじゃ利益少ないでしょ」
「あーはいはい、卑怯だとかそういうこと言いたいんだな。お生憎さまでこちとらこれで食ってるんでね」
「バッカみたい」
「ああ?」
突然駆けつけて挑発する少女。いい加減鬱陶しく、盗賊の一人が彼女に詰め寄る。脅すように体を大きく見せ、斧をギラつかせながら見下ろしてきた。
「お前一人で何ができ…」
「だからさ」
うっ、と男が小さい悲鳴を上げた。
「身長差考えなって」
目の前で股間を抑えうずくまる男を今度は逆に見下す。彼女の足元の草陰にはキーウィの槍が落ちていた。ちょうどいい位置で彼の槍を蹴り上げて相手の股に直撃させたのだ。
「どうした?」
後ろの不穏な空気を感じ取り、残りの盗賊共が少女の方に気を向ける。
その隙を逃さず少女は叫ぶ。
「ほら、今だよ!」
押さえつける力が弱まっていたせいで、キーウィがするりと盗賊たちの手から抜け出した。少女は彼の槍を蹴っ飛ばす。キーウィはしっかりとそれを受け取って体勢を持ち直した。