自称勇者を探し回る…の5
女が急に看板の立つ方の道を進みたいといいだした。キーウィは相手のことを思いやってそれには応じない。
「あえて危険な方に行く必要はないですよ。休憩所はもうすぐですし。」
このあたりは想定どおりに動いてくれた。女は内心ホッとしながら、湧き上がる感情を押し殺しキーウィの腕に身を寄せた。
「いえその…お礼、がしたいので…」
女は伏せ目がちに、少しほおを染め、袖を引くような仕草をした。
ひと目のつかぬところで、「お礼」がしたい。この意味するところは…
キーウィにとって千載一遇のチャンス。今度は二つ返事で誘われるがまま海沿いの道へと足を踏み入れた。一歩一歩奥へ進むたびに鼻息荒く、目が少しずつ血走ってくる。期待が膨らんで股間が熱くなる。
(………サル以下…。)
そんなこと女はお見通しである。ここまで、こんな短期間で嫌な思いを散々っぱら味わわされたのだ。この男は徹底的に剥ぎ取ってやらないと気がすまない。
「あの、どこまで…」
ギョロギョロと瞳を動かしたところで、女がキーウィを道の外れの影に押し込む。
「んんんん!!」
これだけで喜びの雄叫びを上げるキーウィ。目の前の女性がそれまで垂らしていた長い髪を結んだ時点で興奮は最高潮に達していた。
だが、
「はっ!」
冷ややかに鼻で笑われる。
そういう感じの趣向なのかとキーウィはその場に期待に満ちた顔でおとなしく座した。
「おう、にいちゃん。なァにやってんだァ?」
背後からねっとりとした根太い男の声がしてドキリとする。
振り返ると全身鍛え上げた筋肉だるまの男たちが悪い笑顔で待ち構えている。
「なっ!ヌートさん、危ない!下がってください!」
後ろの女性をかばうようにキーウィは槍を抜く。盗賊たちが現れた。じっと睨み合っていると四人、五人と木々の影から姿を表してくる。
「ここまで接近されるとは。ですが安心してください、俺はこれでも結構…」
言い終わらないうちに、背中の鎧の留め具が外された。
「えっ!?はっ!?」
ストンと落ちたチェストプレートに驚き、キーウィは自分の背後の女性が今何をしているのかわからなくなる。
「待って待って、そういうのはこいつら追い払ったあとで!」
「何言ってんのあんた…」
呆れた女性の声。そうこうしているうちにベルトまで外された。
「あっ…ほんと、後で…。」
「気楽なもんね…あんた、状況わからないの?」
そう言って腰当てに手を伸ばす。
「そ、それはこちらのセリフ!お礼は後で構いませんから!」
ずり下がる腰当てを片手で掴みながら、矛先を敵から外さない。
「あんたさあ…」
「ヌート、とんでもないアホを連れてきたな…」
「まあそのほうが仕事がしやすいでしょ。存分にやっちゃって。」
キーウィ越しに男たちと女が会話をしだす。その時、キーウィはなにかに気づいて震え上がった。
「お、お礼ってこういうこと?!」
「そうそう、ようやくわかった?」
「はっ…初めては女の子がいいっ!勘弁してください!男とするのなんて嫌だァ!」
子供のように泣きながら、自らの貞操の危機におびえていた。