自称勇者を探し回る…の4
「や、ヌートさんってきれいですよねえ。ほんとどうして一人旅なんてされてたんだか。」
「ええ、まあ私もいろいろありまして…。」
話をつなげるために適当に相槌を打っていても面倒になるほどの会話。
「だめですよ、女の子なんですからもう少し危機感を持たないと。」
「ははは、気をつけます。」
「このあたりには野盗が出るらしいですからね、僕とかのような護衛は必要ですとも。」
男が無理に続けていた紳士ぶった話し方はそうそうに崩れ去っていた。相手のことを思いやっているようで実質ただの相手のダメ出しを続けているだけという、聞いていても広がりようのない役にも立たない緩やかなお説教をずっとされている。
「ヌートさんはどちらからここまで?」
「三つ隣の小さな村からです。」
「ははあ、あの辺りだと確かに穏やかだし気が緩むのもわかりますよお。」
ターゲットの警戒心をとく係を引き受けたとはいえうんざりするほど退屈な会話を続けられる。
これにはキーウィは全く気づいていないのだが、彼ならばまあ納得できなくはない。
(やっぱりアルバートさんの言った通り、相手を思いやる気持ちを忘れず会話をすると捗るな。この調子で俺が頼れる男だと見せつければ…。)
むしろ手応えまで感じているぐらい鈍いのであった。
二人は例の看板が立っていた分かれ道まで差し掛かる。
「ここが見えたってことはそろそろ休憩所の近くですね。いやぁよかった。」
「ええ、本当に…。」
キーウィはここぞとばかり顔を覗き込み相手を思いやる気持ちをアピールする。
「少し歩いてお疲れのようですね、ここで休みますか?」
(お前の相手で疲れたんだよ…!)
女強盗の叫びは彼に伝わるはずもない。