自称勇者を探し回る…の3
のんきな冒険者をわざと間違った道に誘導し、一息ついて油断しているところを襲う。
そこまではうまくいった。野盗たちが間違っていたのは襲った相手である。相手が戦いに慣れていて、休憩中も警戒を怠らないようであれば、そもそも襲わないという選択も取れたのだが、鎧姿の男が完全に気を抜いていたため作戦を決行するに至った。
炉端のいい具合の石に腰を掛けてぼーっとしている男に向かって、まず一味の女をけしかけた。
「あの、お休みのところすみません。」
澄んだ声色の少し眉をひそめている悩まし気な女性に声をかけられた。それだけで、目標の冒険者の男は舞い上がり、今までのだらしなさがまるでなかったかのようにピシャリと襟を正して直立をする。
「いかがなされましたか。」
垢抜けない顔つきに似つかわしくない口調。普段から使っている言葉ではないことぐらいお見通しだ。それでも一味の女はこの鎧の青年と話を続けた。
「実は道に迷ってしまって…」
「それは大変ですね、ご案内しましょう。」
胸を張って答える。ちらちらと女の反応を伺うのは格好悪い。
しかしこうもあっさりと引っかかってくれると張り合い甲斐がないというもの。女は少し離れた位置でなにか話している男たちの背中に目を向けた。
「はい、できたらお願いしたいですが、あちらの方々は…」
そういうと視線を遮ってその鎧男が入ってくる。
「まあ、こっちの道から下っていくと休憩所がありますから、そこまでご一緒しますよ。」
堂々とした発言だが、微妙に格好悪い、目的地を聞いてそこまで連れて行くぐらい言ってほしいものだ。だが男を連れ出すまでは成功した。
この男が途中途中でべらべらと、今の冒険者のトレンドや自分が所属していた領地の話など本当に興味も面白くもない話をずっと続けるのだから襲撃ポイントまで連れて行くまでにずいぶんとくたびれてしまった。