自称勇者を探し回る…の1
「いくらなんでもキーウィが勝手に離れたりすると思います?」
「んん…悪いがあいつはすると思う。」
何度かキーウィのことを見てきたアルバートが悔しそうにつぶやいた。
キーウィは自分に与えられた持ち場を離れることも、自分の目的のためなら厭わない性格をしている。
アルバートも実のところそのタイプではあるがさすがに優先順位は間違えない。
「今回はトイレか、それとも…」
「お手洗いでしたら流石にひと声かけませんか?」
フリティアの問に、そうやつなんだと首を横に振るアルバートとルリ。
「まあそれぐらいならまだ叱ればなんとかなりますがね。」
オーギは苦笑した。
「でも…アル。」
ルリがおろしたての鎧を心配そうに抱きながら先頭を守るアルバートの裾を片手で引く。
「さっき言ってたように、野盗がキーウィを襲ってたとしたら…。」
難しい顔をする彼女をよそに、アルバートは前方や脇道になにか手がかりがないかキョロキョロ周囲に目を配る。
「あの距離で戦う音が聞こえなかったからな、いきなり襲われたってことはないだろう。それに声を出す前に即死するようなことをされたとしても、さっきあいつがいた辺りにはそんな跡はなかった。」
血痕一滴どこにも見当たらなかった。そればかりか踏ん張ったような跡も引きずったような跡も。キーウィは忽然と消えてしまった。消えたのは謎だが、少し安心したのかるりの表情は和らいだ。
「キーウィさんが勝手に動くとしたら、はばかり以外に何がありますかね。」
「こっそり黙って持ち場を離れる理由…。」
それぞれが今一度キーウィという男を思い返してみる。真面目にみえるが好戦的、夢想家で童貞。
「…少しデリカシーにかけます。そのあたりアルといい勝負。」
「は?おい、流石に聞き捨てならんぞ。」
「どうでしょうかねぇ。」
ルリがぷいっとそっぽを向く。
(…まさか、さっきのお披露目のときか?)
それ以上語ってくれなかったので真相は彼女のみ知るところだ。思い出し苛つきなのかプリプリと頬を膨らませていた。