やはり危険に巻き込まれる…の3
鎧を着させてもらうためにフリティアと物陰に入っていった。
危ないぞ、と警告をしたものの、
「ルリ様はお披露目がしたいんですから、男衆の目の前で着替えるなどはしたない真似はできません。」
と一蹴されてしまった。まあフリティアが着いていればある程度は大丈夫だろう。むしろおびき寄せるチャンスかもしれない。
「キーウィ、お前向こう側行っとけ。」
手で犬でも追いやるようにキーウィに支持を出した。忠犬キーウィは何も疑わずにアルバートの言うことを聞く。
「あれではキーウィさん一人が襲われかねませんが…。」
姿は見えるが声を張らねば届かないほどの距離まで歩いていく。それを見てオーギがもっともな指摘をした。
「あいつはあいつでそうすぐにはやられないし、この距離なら矢が届く。」
アルバートは弓を構え指先で遠くのキーウィを捉えた。
「ほう、短弓を使われるんですね。」
狩りに適した射程の短い軽い弓矢である。射た相手を毒で弱らせて捕まえるので、当たれば勝ちの武器である。殺傷能力は低いので相手を逃しやすいが、人殺しを目的としていないルリ一行の旅においては適当だと言える。
「…ふふ。」
オーギが小さく笑った。あまりにも唐突だったのでアルバートは首をひねる。
「どうした。」
「いえ、アルバートさんを見ていると、騎士とは何かと思ってしまいましてね。」
得心のいかない様子のアルバートにオーギは前方を見据えたまま説明を始める。
「毒で弱らせて相手を叩くとは一般的に騎士道精神に反するものでしょう。そういう教義、誓いのはずです。それに、儀式用ではない短刀をベルトに携え常に軽装備。私の知る限り、聖騎士を名乗るものであなたの如きは見たことがないです。」
なかなかに鋭い指摘である。だがアルバートは眉一つ動かさずオーギに答えた。
「俺は相手を守るために効率を重視してる。大盾、重装は確かに誰かを守るには適しているが、そもそもその状況にならないことが一番なんだよ。騎士の役割は相手を守ること、それは敵とぶつかって耐えることじゃないさ。それによ、騎士だなんだって言ってるのは上ばっかりで、俺らみたいなのは衣食住揃ってるだけの傭兵みたいなもんだ。」
オーギはうなずいた。
「あなたは背格好はちぐはぐなのに言ってることはまさに騎士であらせられる。これから先も頼りにしてますよ。」