やはり危険に巻き込まれる…の2
山へと入っていく道の少し外れたところに、ひっそりと草木に隠すように物見台が建てられている。そこから道行く人々を眺めゆっくりと他の地点にいる仲間へと連絡をしていく。
その通達はまたたく間に山の端々に伝わっていった。
「ん〜、このあたりは少し…」
分かれ道から山間へと進んだルリ様御一行は、休憩所へとたどり着いていた。しかしこれがまた汚い。しばらくこのあたりで休んだ者はいないらしく、椅子には砂埃がこびりついていて端の方には雑草が好き放題伸びている。先に休んだ小売店が併設されている休憩所とはえらい違いである。
ルリを大切にしているフリティアは着席を促すわけにも行かず、またスイーパーの出番かと荷物をあさり始めた。
「しかしまあ、やられたかな、これは。」
「はい?」
アルバートがしげしげとこの荒れ放題の休憩所をみてつぶやいた。旅人がほとんど通らない、ここの管理者もしばらく訪れていない。
そういう道にはどういう者が潜んでいるのかアルバートは一番よくわかっていた。
「どうする、結構来たけど引き返すか?」
賊の類はアルバートに言わせれば非効率的ではあるが、それでも疲れた冒険者相手となると多少は有利な立場に立つ。
「いえ、少し疲れただけですから野営も視野に入れて先に進みましょう。」
フリティアが取り出したスイーパーを抱えて固まった。
「じゃあ先に隠さず言っておくが、おそらく前も後ろも賊が待ち伏せていて最悪戦闘になる。」
そんな予感が全くしなかったルリは驚いた。
「結局襲われるなら、アル。やっぱり先に進んだほうがいいんじゃ…?」
「……戦闘で疲弊するだろうから、必ず休めるとわかっている休憩所に引き返す途中で襲われる方がいいだろう。」
「確かに前には何があるかわかってないですからね。まして、野営地を敵の領域内に立てるのは危険でしょう。」
「そういうことだ。」
オーギはおろしていた旅の荷物を背負った。
「でも、まだ出てくると決まっているわけではないでしょう?」
フリティアが異を唱える。
「それに、出てきても俺の槍で一突きですよ。」
腕に覚えのあるキーウィも先を急ぐことを提案した。
「進むならルリに何か防具を着させてやらないと。」
「それでしたら心配なさらず。」
フリティアが得意げになって自分の荷物に手を突っ込む。
「あっ、それ!」
高々と掲げられた女性用鎧。女性らしい体つきにフィットするように作られたプラムジョニーのラブメイルシリーズである。
若い女性に特に人気の一品だ。当然のようにルリも憧れていた。
「お前いつの間に、そんな…」
「ふふん。誰かさんと違って私はルリ様の本当に欲しいものがわかりますからね。」
ペアリングを渡したアルバートへの対抗意識のなせる技である。先の白の街でちゃっかり購入していた。