やはり危険に巻き込まれる…の1
「ん…」
先頭を歩いていたアルバートが不意に立ち止まる。
フリティアとオーギとおしゃべりしてよそ見をしていたルリが頭をぶつけてしまった。
「んおっ!」
声を上げて前方に倒れこむアルバート。ちょっと自分がぶつかっただけなのに大げさだと笑った。
「…いかがしました、アルバートさん。」
代わりにオーギがアルバートに並ぶ。
そこには二又の道に標識が一本、片側の海沿いの道を塞ぐようにして立てられていた。
「ふうん、『この先、野盗出没 注意』と。」
今更このメンバーで賊徒におびえる必要はないが、ルリのためにできるだけ安全な道を行くべきである。ただしかし、安全な道は山へと続いており、北端にある目的地まで遠回りを強いられることになる。船や車で行けばある程度早く着くのであるが、なにぶん徒歩で強行しているので、遠回りになろうとも山間の道を選ぶより方法はない。
「無軌道な輩に後れはとらないでしょうが、ここは親切な案内に従い山道を通るべきかと。」
「そうですね…。」
フリティアとルリが相談し始めている。アルバートはそれが終わってしまう前に、看板をしげしげと見つめた。なんだか違和感がある。
「この標識は最近立てられたみたいだ。」
看板が打ち付けられた地面に残る土の湿り気を見てそう伝えた。
「といいますと?」
「二つほどだな……冒険者からの相次ぐ報告で政府が今朝ほど立てたばかりか、あるいは」
「そちらに進まれると困る者が立てたか。」
オーギの応答にアルバートはうなずいた。
ルリは先のこともあり、アルバートの顔色を窺った。自分は信じたいがアルバートがう何かを疑っている時は確かに良くないことが起きるのである。
「山間の道へ誘導することを目的としているのか、この先へ進ませないようにしているのか、あるいは両方…。」
重苦しい空気が立ち込め始めた時意外な人物が提案をする。
「考えてもしょうがないじゃないですか。言われた通り、野盗の出るほうを避けて山の方行きましょ?」
と、キーウィが一声かけると、それもそうだと各々が武器を手に取りルリの四方をがっちりと固めた。
「な、なんかちょっと厳重すぎですね…」
「ルリのためだからな。」
窮屈そうにするルリには一目もくれずにアルバートが前へと進んでいった。