なんだかんだで頼り切り…の8(終)
休憩エリアで各々、砂漠地帯で失った携帯食料や歯磨き粉などの日用品をいくつかと、アルバートはそれに加えてあるものを探していた。
「アル、珍しいですね。まだ決まりませんか?」
ルリが棚の影からひょっこり首を出して、何かを探している様子のアルバートに訊ねた。
「んー、いやミソを探していてな。」
ルリがアルバートやキーウィにもたらした
魔法の調味料である。最後のひと匙がなくなってから久しくあの味を堪能していない。調味料の棚を一段一段くまなく探しているがその一端すら目に入ってこなかった。
「残念ですが、ミソは東の方に行かないと流通してなくて…」
珍味扱いである。長旅でも保存できるのでぜひ一瓶ぐらいは持っておきたかったのだが地域性の高い調味料らしい。
がっかりしたアルバートを見てルリもなんとかフォローしようとする。
「あ、あ、でもこれはありましたよ。」
ルリの手のひらにすっぽり収まるの小瓶に何やら黒い液体が入っている。
「んん?」
「これはショウユです。」
「…へえ?」
「原料はミソと同じで、かかる手間が果てしないのですがとても人気の調味料ですよ。」
オリーブ油、塩、香草、スパイス、それらにはないエキゾチックな香りが特徴の調味料だという。
「でもなんか黒すぎないか?」
「そんなことはないです。ほら。」
瓶を傾けると澄んだ赤茶の液体が内側を伝った。
「ね、香ばしい色でしょう?」
色の匂いなどはわからないが、ルリの言いたいことは伝わった。アルが少し笑うとルリも笑い返す。
「…よかった。」
「ん?」
「アルってば、今朝からずっと難しい顔してて
、私が声をかけても素っ気なかったんですもの。……ふふ、まさかずっとおミソのことを考えてたんですか?」
ルリがアルバートを茶化す。
「…いや………や、そうだな。そうだよ。」
アルバートは頭をかいた。