なんだかんだで頼り切り…の7
ディアカイン製の空調設備。あらゆる季節において最も快適な室内を作り出すその名を知らぬものはない大型魔法具。実に世界市場のシェアの七割を占める安心と信頼のメーカー品である。
「魔具は大きくなればなるほど制御に苦労しますから、こういうのは定期的に魔道士によるメンテナンスがあるんですよ。」
空調の聞いた休憩所でルリが得意げにそういった。魔具は基本的に自身のマナを装填し、本体に記された術式にしたがって、火を吹いたり風を出したり水を流したりと作動する。メーカーはなるべくそのメンテナンスによるマナの供給量が少なくてすむよう日夜研究に勤しんでいるそうだ。
魔具はマナを与えて力を発揮させるものなのである。
「つまりこの世界の神にマナを捧げるのも同じようなことだと言えるんですかね?」
休憩室内で涼むキーウィが意外な質問をした。
「まあ…そんな感じでしょうか?」
しかしなんだかルリの反応が鈍い。まさか自分が何をやっているのか理解できていないのだろうか。捧げることと、供給すること。言葉の違いの問題だけで大差ないのだろうか。
「…でも世界を揺るがす神様を道具扱いとはキーウィもなかなか度胸ありますね。」
「いやいや、それほどでも。」
「ほめてないです。」
ルリは休憩スペースから売店スペースにフラフラと移動する。さきほど干した芋を食べてたばかりなのだが、まだお腹が膨れていないのかお菓子のコーナーに入っていった。
「あっ、ルリ様。」
フリティアがそれと見てすぐさま駆け寄っていく。こういうのは体に良くないですよ、とルリを引き止めている。
「み、見てるだけですよ、もちろん。」
日々外食をしている者が何をいうかと思うが、スナック菓子、キャンディ、クッキー…店売りの工場で作られたおやつの大半はやみつきになるように、わざと味覚の刺激を強くしている。干した芋程度では満足できなくなるほどの
おいしさである。
「甘くて美味しいものですから目指す街には有名なケーキ屋があるそうですから、そちらでご馳走いたします。こういうお菓子はいけません、我慢も必要ですよ。」
年はそれほど離れていないのに完全に母親目線である。フリティアはルリを甘やかしまくる節があるのだが、お菓子に対してはなぜかやたらと厳しい。何かあったのだろうか。
アルバートは休憩所の外で彼女らの会話に聞き耳を立てていた。