なんだかんだで頼り切り…の5
朝になると今日もまた元気にルリが階段を駆け下りる。その後にフリティアが粛々と続く。
最後の一段を降り終えたとき、一人待合ソファに腰掛けるアルバートの後姿が真っ先に目に入った。
ルリは何か思いついたように身をかがめ、音を立てずにそろりそろりと近づいていく。少し含み笑いをしながら、息を潜めて彼の頭をしっかりと見据えた。
ソファの背もたれの後ろにピタリと張り付き、アルバートの息遣いを確認する。フリティアがこちらを見ているが、静かにするように人差し指を唇に当てて笑った。その際にフリティアが一瞬恍惚の表情になる。
ゆっくり頭を持ち上げてアルバート肩までうなじまで後頭部まで伸び上がっていく。両手で手刀を作り、まるで獲物を狙うかのように一度止まった。
まだ反応はない。
ルリは勢いよくアルバートの頭に手を伸ばした。
「だーれっ………だ…?」
掴んだと思った時にはルリの手は空を切っていた。
気配を察知するのは得意中の得意だ。アルバートは一歩前に進みベルトに手を当ててすばやく振り返る。
「あ、お、おはよう、ございます。アル。」
少し顔を赤くして困った顔のルリであった。
「ん、ああ、おはよ。」
瞬時に生まれた殺気を気取られる前に消して。息を吐いて何事もなく、からかうこともなく普通に返事をする。
「今日も早いな。」
「そ、そ、うですか…ね?アルがあの…一番乗りでしょ。」
厳密には早朝から体作りをしているオーギのほうが早かった。
アルバートは朝から体を洗い身を清め、一人で昨日のごとくソファに腰を掛けていた。何をしようとしていたのかには触れず、何気ない会話に移す。
「まだキーウィが降りてきてない。起こしてくる。」
そう言ってツカツカとルリの横を通り過ぎていった。
出鼻をくじかれて少ししょげてしまうルリ。これならいつもみたいにからかわれたほうが良かった。
「ルリ様!今のを私に!私でやって発散しましょ!」
興奮した様子のフリティアが微妙な気遣いを見せていた。
「だーれだ。」
「んんんー!わかりませんーんんんんっ!」
茶番である。
なぜか目隠しされて悶えるフリティアが妙にルリには面白かったので少し救われた気分であったようだ。