なんだかんだで頼り切り…の4
ルリは宿泊部屋に入るなり備え付けの上下着替えずベッドに突っ伏した。枕を手繰り寄せて顔を埋める。やわらかな肌触りで耳まで枕に沈んでしまった。
「んふふふ…」
今日の出来事を思い返して、思わず出てしまうしまりのない表情をひた隠した。
(アルは、そうですか、私に一目惚れしていたんですか…。)
聞かなかったことにしてあげようと心に決めたものの、流石にはっきり聞いてしまったので忘れることはできない。
憧れていた男性が自分に対して好意を抱いていたとわかってしまった。
「ふふ、ふふふ…」
今までの言動の一つ一つが、彼の気持ちの現れだったと思うとこれはニヤけずにはいられない。
(アルはやっぱり、私のことを大人だと思ってくれているんでしょうか。)
それはルリにとってとても嬉しいことである。今までは守られ大切に育てられてきたルリ。この旅で使命を負ってはいるが自由を手にし自分で道を切り開く、そういう自立を目指していた。
その都度何度も失敗してきたが、アルバートはそれをいつも受け止めてくれていた。だからこそルリはアルバートを信頼している。
そんな彼が、自分に、一目惚れした、という。
度々女癖が悪そうなところは見受けられたが、咎めればちゃんと聞き入れてくれたし、怒ったらちゃんと謝ってくれていた。
(アル…。)
彼が私を好きだったなんて。
嬉しくてしょうがない。
枕を抱いたままゴロリと寝返った。着崩れも直さず、うっとりと瞳を震わして甘いため息を吐く。
(この旅が終わってから、もう一度言ってくれるでしょうか?でも終わってしまったら解散しなくてはならないし…)
今すぐにでも改めて告白してもらいたい気分であった。もう答えも用意している。だが周りが許さないだろう。特にフリティアがものすごい剣幕で怒っていたのを見た。
(みんなを納得させるような状況でなくてはいけませんよね。)
自分から告白、というのはいささが恥ずかしくて勇気が出ない。それに。
(私は、まあ…アルのことを好ましく思ってますけど、恋愛とか、そういうのじゃなく。)
誰も心の中なんて見えやしないのに言い訳するように心の中でつぶやく。
(ティアも私が聞かなかったことにするというのは伝えてくれただろうし、少し待ってればチャンスはありますよね、きっと。)
チャンス、つまり告白されるような隙をみせればいいとルリは想像した。気持ちの上ではもう既に彼の思いを受け止めたつもりでいる。
マナによって室内に充満する甘い乙女の香りに従者のフリティアは頭を悩ませていた。