なんだかんだで頼り切り…の1
アルバートはバンダナを結ばれ口を塞がれた。両手にまるで枷のような鉄のブレスレットをはめられ、ルリとのペアリングは没収された。
「ふぇんふゅーふぎひゃはいふぁ?」
モゴモゴと何やら不満を述べるアルバート。ルリは苦笑いして見つめた。
「あなたにはそれぐらい必要ということですよ。」
まだ制裁は続いているようだ。二人で散歩に出かけている間にルリから許可をもらったらしく、顔を合わせるなりせっせと取り付けられた。
口はどうでもいいが、手の重りはだいぶ辛い。過去の癖から手先だけは自由にしておくよう心がけているので、この制限はそれなりに心理的なストレスであった。
「次の街までは結構ありそうですから、また馬車で…」
「いーふぁへんふるふぁにほほう。」
「だめですよ、これは試練の道のりですからね。」
「今のわかるんだ…。」
「こういう時アルは必ず楽したがりますからね。」
済ました顔でアルバートのダメ出しをするルリ。
「ほほはっふぁはああむなひふぇにあっふぁんふぁほ」
「そ、それは…」
「いやいや待って、アルバートさん何言ってるのか全然わからないですよ?」
「キーウィ、ほっときなさい。そうやって口元の枷を軽くする作戦でしょう。抜け目のないこの男のことです。…それに今の所ルリ様とは会話が成り立っているので問題ありません。」
散々な扱いである。
結局、馬車でもなく、車でもなく、徒歩で次の神殿に向かうことになった。そこには大地の神が待つらしい。海、空、大地とまさにお誂え向きの神様である。
「目的地までは時間がかかりますが、宿場町がその間に点在しています。一日歩けば、野宿は避けられるでしょう。」
オーギが先導して地図を広げている。
「野宿になっても大丈夫ですよ、こっちはもう五人もいますし、何度もテントはったりして大分なれましたから。」
鼻高々にトンと胸を叩く。寝袋を持っているのはアルバートで、キャンプ設営が素早いのもアルバートである。
「ほうにひほほはひはふぁふはいは。」
「そう言わずに。アルの事頼りにしてるんです。」
彼女に微笑まれるとどうしても態度が甘くなってしまうアルバートであった。
(しかしなんだってここまで俺は気に入ってんだろうな…)
不思議な違和感をアルバートは覚えていた。