まだ少しだけ観ていきたい…の4
街はそれはもう大騒ぎだった。昨日まで開いていたはずの占いの館が突如として店じまいをしてしまった。アルバートたちは慌てふためくその現場を素知らぬ顔で横切っていく。
ルリが複雑な表情をしたのを見て、フリティアはすかさず通りの向こうを指さした。
「ルリ様、ご覧ください。港に大帆船が泊まってますよ。」
「おお〜、さすがに大国の商船は違いますね。」
四艘の小舟に囲まれて巨大な船が港に鎮座している。小舟と言ってもそれ一隻で十分な積み荷と船員を乗せられるもので、巨大な船は大げさに言えばそれ一つで町のような大きさを誇っている。
それにこの船を受け入れられる港というのも確かにすごい規模である。
「ディアマンの商船団ですね。」
都のきらびやかな装飾品を持ってくる代わりに、この街の特産品を買い付けに来た。船を海賊から守る兵団も一緒に乗り込んでいて、常に入り口出口全てに人垣を作り警戒している。
「アルバートさんももしかしたら知り合いに会えるかもしれないですね。」
アルバートがなりすましている騎士団は大国の一領地の精鋭だ。当然こういう交易の場に駆り出されることも考えられる。
(あまり近づきたくないな…。)
そう考えていたアルバートは、
「今会う必要はないな。俺はルリとの旅に合流する時に今生の別れを済ましてきたんだ。」
「え?なぜです。」
「そらお前、旅の目的の大きさを考えれば過酷な道のりになるだろう。もう俺のことは死んだと思ってくれって伝えておいた。」
ふうん、とキーウィは感心したようにうなずいた。だがこのセリフが意外とルリに響いてたらしい。
「それならアル、なおさら顔を見せるべきですよ!」
今朝から気合十分のルリが目を輝かせてアルバートに主張してくる。
「私も、アルのこれまでの活躍を皆さんにきちんと伝えます!久々の再会ですから。」
キーウィをかわすついでにルリの好感度稼ぎも兼ねてたのだが、欲張ったためかそれの効果がありすぎて裏目に出た。オーギもにこやかに再会を促してくる。
「じゃ、みんなで行きましょうか!」
キーウィが張り切って先導し、かつてないピンチがアルバートを襲う。