まだ少しだけ観ていきたい…の3
装いも新たに巫女がエントランスまでやってきた。砂ホコリで汚れてしまった装束を洗っているので今は袖のない、肩までむき出しになる白衣。控えめな金細工の細い首飾りが品の良さを強調している。いつもの赤い下履きかと思ったら少し赤が鮮やかで(これは朱色、とルリは言っていた。)、なにか気持ちまで改まった感じがこちらにまで伝わってきた。
「お待たせしてごめんなさい。私も準備万端です。次の街へ発ちましょう。」
すでに大荷物を背負って鼻息荒く、気合十分である。
「はい、もちろん。」と早速フリティアが側に立ち、今日の出で立ちを褒める。きちんと束ねられた髪を褒める。とにかく褒めちぎった。
すると普段なら顔を真っ赤にしてフニャフニャと照れてみせるところ、今日は違った。
「ありがとうございまっ…」
顔を赤くして照れてはいた。ただ、全身に力を込めてピンと直立している。
「なんか気合入ってんな…」
「まあまあ、これは巫女様の成長、ということで。」
成長、なのだろうか。ルリの気合が入りしすぎて空回りしないかがアルバートは心配であった。
その不安を感じ取ったのかオーギが目配せをしてくる。彼の察しの良さには目を見はる者がある。
「巫女様、まずは腹ごしらえ。朝食を摂りに街まで出ましょう。」
「はいっ。」
歯切れよく返事をするルリ。食事をしにいくには十分すぎるほどの元気である。従者たちは微笑ましく彼女を連れ立って街へと繰り出していった。