まだ少しだけ観ていきたい…の1
フリティアは悩んでいた。
宿のフロント、待合スペースにさっさと出発の支度を済ませたフリティアとオーギが互いに膝を突き合わせて座っている。
最小限のものしか持っていないフリティアはルリの手伝いを申し出たが、自分でやる、と言って聞かなかったので仕方無しにひと足早くフロントに来ていた。オーギも同様である。
先日の聖域での一件で主のルリと気に食わないアルバートの仲が一歩踏み込んだ感じになった。二歩以上踏み込ませないための牽制はできていたが、それでもルリは一層アルバートのことを信頼し、アルバートも今朝なんて顔を合わせるなりちょっとからかっていたり、より気心のしれた間柄になれた様子だ。
「そもそも、フリティアさんはどうしてそこまでアルバートさんが気にいらないのですか?」
フリティアは近頃仲間入りを果たしメンバーの最年者を更新したオーギに相談をしていた。
「一つはライバル心からです。私のほうがより近くでルリ様をお守りしているのに。」
オーギは面と向かいフリティアの話を頷きながら聞いている。
「でもルリ様はあなたのことを深く信頼していますよ。」
同性ということもあり、ルリにとって欠かせない存在である。
「ルリ様はあの天神の社で私のような女性になるのが目標とおっしゃっていました。」
口元を抑えてにやけ顔を隠す。恥じらう乙女というには少々欲がこぼれ落ち過ぎである。
「…ルリ様が目標を果たされる…そのためには!なんとしてもアルバートとくっつけてはいけないのです!」
「……アルバートさんを受け入れられない、もう一つは嫉妬心から、ですか…?」
「ん、それもありますが…何というか、どこか信用ならないんです。」
ほう、とオーギは首をひねった。女性の勘というのは、男性の持つそれよりも研ぎ澄まされている時がままにある。
「雰囲気は軽薄そうですしね。」
オーギは苦笑した。
「やつの実力も、判断力も間違ってはいないし、一戦士としては信頼に値すると思っていますが。」
「乙女の純潔を汚しかねない、と。」
フリティアは一応頷いたが、それもなんだか腑に落ちていないようであった。
「まあまあ、最後の一歩さえ踏み込ませなければいいのです。不安であるなら我々が二枚の盾となりましょう。」
フリティアは同士を得て心強さを覚えた。
「私もそれとなく牽制をしておきましょう。」
オーギは立ち上がると遠くで待ちぼうけているアルバートとキーウィのもとへ向かっていく。だいたい彼らが二人きりになっている時はキーウィの相談事のときであった。