も、これだけは譲れない…の9
思いつめたルリの横顔。その様子に慌てるフリティア。
ーーさあ、思いの丈をぶつけてしまいなさい。
煽る天神。そんなやり取りを暖かく見守るオーギ。フリティアは強引に止めるとルリに嫌われかねないと思い動けなかった。それだけは避けたいので、彼女がとった行動は。
「…もう平気なのか?」
神殿の中が静かになってからまっさきにルリが出てきてアルバートが意外そうな顔をする。
キーウィと二人して入り口を挟むようにその両端に控えて先程まで雑談をしていた。
ルリはまっすぐアルバートを見つめて頷く。
「そか、だったら良かった。次の街に向かう準備をしてから…」
「荷物はあの場で飲み込まれちゃいましたからねぇ。」
荷物を背負う仕草をしてしまったアルバートを見てキーウィが残念そうにつぶやいた。
「あの、アルにお話が。」
「ん?」
二人がのんきに過ごしているところにルリがようやく声をかける。
「なにか深刻な話か?」
少し間をおいてからルリが頷いた。ちらちらと側で座っているキーウィの方を気にしているのだが、彼は気に求めない様子で、
「お気になさらず。」
と答えた。
「…いや待て、キーウィがこの場に邪魔なんだろ。」
「え、そうですか?」
「どうみてもそうだよ。」
アルバートにはっきり言われてキーウィは渋々立ち上がり神殿の中に入っていった。
「…ん、話ってなんだ。」
アルバートは寄りかかっていたカベから離れてルリと向き合った。
「その…」
言い出しにくそうなルリ。その仕草がいじらしくアルバートの顔が思わず緩んだ。
(見られてないからいいだろう。)
なんて考えていたところに突然悪寒が走る。
ルリの後ろから鬼の形相をした、大斧を手に持つフリティアの姿が覗いていた。歯を強く食いしばっているのがこの位置からでもよくわかる。下手な返答をしようものなら一刀両断されかねない。
アルバートは生唾を飲み込んだ。