も、これだけは譲れない…の8
それまでの経緯をオーギ苦笑しながら聞いていた。
「なるほど、あろうことか神様からからかわれてこの世界を焼き尽くすところだったのですね。」
オーギが中腰になりルリに対して杖を振り続ける。ぐらぐらと杖の先を振られるごとにるりはだんだん落ち着きを取り戻していく。
「しかし…そうですか、なるほど。」
一種の催眠治療でルリはリラックス状態になり、ほうけながらウトウトと舟を漕ぎ始めた。
「違います、そんなわけない。」
と否定し続けるのはルリではなくフリティア。腕や判断力は確かだが、軽薄そうなので、というか実際フラフラどこかへ行ってしまいがちなので、そんな男は認められない、と怒っている。
(ルリ様のあんなところをまさぐってた男なんかに…!)
そんな至極まっとうな理由の裏では羨ましいという感情が強く働いているようだ。
「まあまあフリティアさん。ルリ様のお気持ちも尊重しなくては。」
「うう、キーウィ相手も嫌ですがアルバートはもっと嫌です。なにより目つきがやらしい。」
本人のいないところでそんなことを言われている。
「そんな目をしていましたか…?」
フリティアは神妙な顔をして頷く。
「ルリ様を敬愛するもの同士、そのあたりは勘付いてしまうんですよ。」
「なるほど、同族嫌悪。」
「私のはもっとピュアです!」
そんなことはない。
そばでのやり取りも夢の向こう側で行われているようで、ルリ自身は理解が追いついていなかった。だが突然、
「あっ」
倒れかけた瞬間、反射で足を出して踏みとどまり意識が戻った。
「すみません、オーギ。ティア。もう大丈夫です。」
「まだぼんやりしますか?アルバートさんやキーウィさんを呼んでも?」
「……少しだけ。えっとさっきまで私は…」
やはり強力な魔法が使われると前後の記憶が曖昧になるようだ。アルバートの名をさり気なく出しても特にいつもどおりの反応を示しただけだった。
「あっ…そうです。」
なにか思い出したのかとフリティアとオーギが顔を覗き込む。この至近距離で熱波を再び放たれてしまうと外にさらしている肌が焼け付いてしまいかねない。
「私、アルに言わないといけないことがあるんでした。」
「えっ…」
フリティアが口を開けたまま固まった。