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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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も、これだけは譲れない…の7

――へぇ?そうなんですか。

 どこか含み笑いをしているような声色。ルリはネウラリアの直視から目を背けて口を閉ざしたまま頷く。

――故郷にあなたの恋焦がれるような人はいないのですね。

 このネウラリアの問いかけには拍子抜けしてしまった。もっと根掘り葉掘り聞かれるかと思っていたのだ。

「もちろんです。私は使命を帯びて世界を旅しているのですから、そういう子供っぽい浮ついた感情に流される場合ではないんです。」

 ルリはにわかに落ち着きを取り戻し、胸を張ってネウラリアの問いを否定する。なにせ故郷に恋人などいないのだから。鼻高々に、意気揚々と、腰に手を当て仁王立ちでネウラリアの臨んだ。その様子がネウラリアはおかしかったのか、またカラカラと笑う。

――巫女様は愛らしいですね。

「わかります。」

「へっ?いやそんなっ!」

 話がころころと変わるのでルリもそれに合わせてころころと表情が変わる。急に可愛いだなんて言われてくすぐったい思いをしてしまった。だが、これに対してルリは思うところがある。

「その…私は…」

 今度は少し自信無げになる。その様子をネウラリア、フリティアともどもじっと優しく見つめている。

「か、可愛いといわれるより…その、フリティアのようにかっこよくてきれいな人になりたいんです。」

「まあ!」

 フリティアが自分のことをほめられて飛び上がった。

――いずれなれますよ。

「いずれではなく…できるだけ早く、がいいんです…。」

 籠の小鳥のように丁寧に丁寧に愛されながら育てられたルリは、一切の邪悪を持たない純粋な子供として育ったのと引き換えに、自分のことを自分ではどうにできないもどかしさを感じていた生きてきていた。救われ、守られ、かいがいしく世話をされるだけでいいのかと、巫女としての修行をしながらもぼんやり悩んでいたことがある。

 ルリにとってかっこいい大人の女性というのが自立の象徴であった。

 そもそもそう考えるようになったのは、先代の巫女と顔を合わせた時のことであった。その時は祭の日だったため遠くから眺めることしかできなかった。子どもも大人もはしゃぎまわるそんな中において、ただ静かにほほ笑むその眼が、そこにいるはずなのにまるで天から眺められているかのように感じられた。周りに流されず、凛と立つその姿がルリの胸を強く打った。

「私もあのようになるのだ、とその時誓いました。先代の巫女様が歩くすぐ後ろを一人の騎士様が付き従っていました。その方は仮面をしていてよく見えなかったのですが、旅の話を聞くと巫女様をのことをよく守り時に支えあっていたのだとか。二人の間には故土場はなくとも絶大な信頼関係が築かれていると私は思いました。」

――それで、あの騎士とそのような関係になりたいと。

「はい…えっ!!いえ!?」

 ルリは安心したところにいきなり水をかけられたかのごとく、驚きすぎて少し宙に浮いた。ネウラリアはすかさずたたみかける。

――あの少し軽薄そうな、皮鎧の男に気があるのですね。

「そんなこと…ひっ、一言も!」

「そうです!ちがいます!」

 フリティアもこぞって抗議する。

――ええ、違うんですか?口ぶりから言って、巫女様は騎士にあこがれているのでしょう?皮鎧の男がそうは見えないけど騎士の者なのでしょう?だったら…

「アルが好きとか!そういうんじゃないです!信頼関係を気付きたいだけであって!」

 ネウラリアは満足そうにはばたく。だが、話をさせていくとどんどんぼろが出てきそうで面白そうだ。神は巫女をもう少し茶化して遊ぼうとする。

――彼がここに入ってきたとき、瞳がぱっと明るくなっていましたよ?

「そんなことないです!あれは、みんなが無事だったからうれしくって!」

 本当のことである。

――真っ先にどなたのそばに行っていましたっけ?

 もちろんアルバートの横まで走った。

 ルリはパクパクと何か言いたげだが、それ以上に心の中を見抜かれそうで非常に恥ずかしかった。

「…ル、ルリ様いったん落ち着きましょう?」

 とフリティアがなだめようとするものの、一度ざわついた心はそう簡単に戻らない。あたりに熱がたまってきた。

――いいじゃないですか。ペアリングを用意するぐらいなんですから。彼もきっとまんざらじゃありませんよ。

 その瞬間、神殿に轟音が響くほどの勢いの熱波がルリから放たれた。

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