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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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も、これだけは譲れない…の2

 小さな男が怯え震えているのはなかなか見るに堪えるものがあった。小男を縛り上げたままアルバートとオーギが外に出る。

 入り口から彼らが出ていく時、ルリはなにか思案している様子のアルバートの横顔に語りかけた。

「アル、その…あまりひどいことはしないでくださいね?」

「…んなことするか。」

「万が一、アルバートさんがそのようなことをしようとしても私が必ず止めますので。ご安心を。」

 アルバートは手を振って、オーギは笑顔をルリに向けて彼女に答えた。熱砂の広がる神殿の外に男を連れ出すと二人の顔が冷徹な眼差しに変わる。

 その緊張感に、地下管理者ハツネはすくみあがってしまった。

「…ち、違うのですっ…」

 か細い、弱々しい声を漏らしながらハツネは恐怖から体をよじらせた。

「まだ何も聞いてねえ。」

「はは、顔なじみではありませんか。何、気になることの一つ二つ尋ねるだけです。いや、三、四つでしたか。」

 元来戦闘能力のない管理好きの管理下手な中年である。武装した神官とゴロツキのような男に見下されては観念する他ない。

「やはりこの靴はあのレンリが売っていたものと同じですね。」

 オーギが持っているメイスの先でハツネの足先を突く。悪逆を誅殺するための鉄球とその鋭い棘が触れるたびに恐怖を煽られる。

「あの、どうか…い、命だけは…っ!」

 巫女が口止めしていたのでそのあたりの希望はハツネの中にあった。だが、アルバートはせせら笑う。

「ルリの手前ああ返したが…お前の態度次第だな?」

 これみよがしに鋭く磨かれたナイフを取り出して、手元で得物の状態を確認する。その姿に、必ず止めると言っていたオーギは無反応であった。

「わっわかりました!なんでもいいますから!」

「当然だな。」

 ナイフはしまわず、ハツネの視界の端にとどめながらゆっくり近づいた。

「お前たちがどこから来たのかとその目的。ルリをどうするつもりだったんだ?」

「へ、へぇ…」

 ハツネは生唾を飲み込む。

「っ…み、皆様とオナシ世界平和のため、でございます…」

 瞬間、ハツネの股下にナイフが突き立てられた。

「建前はいいんだよ。」

「ルリ様を、救世の巫女を我々から強奪した理由を伺っているのです。」

 ハツネはブルブルと首を振り続けるだけ。

「わ、私はそれしか聞いてないのでございます!あなた方が巫女を拐かした悪人であるとも!」

 オーギとアルバートは顔を見合わせる。

 ハツネの立場はずいぶん低いようで大雑把な内容しか伝えられていないようであった。

 ハズレを引いたと思いつつ、他の質問をする。

「じゃあ、お前たちは何者なんだ。そのローブはメジスティのお偉方が着てるやつじゃないか。」

「私は生まれも育ちもラルドの西端の村なもんでして…あれは確かに上等なローブでしたが、彼らから一枚譲り受けたのです。」

「靴もローブももらいものだと?ではあなたはなんの関係があってあの集団と王道をともに…いや、もっといえばあの地下の所業は厳重に罰せられるべきものだと思いますが。」

 地下に並ぶ無数の骸骨が思い起こされる。きれいに並べられた元冒険者の頭がこの男の異常さを物語っている。

 ルリは記憶が混濁しているせいか、ハツネを「どこかでみたいい印象のない人」程度に認識していた。

「あれは…」

 途端に口ごもるハツネ。アルバートは睨みを聞かせて刃物でハツネを脅す。冷たい刃先が皮膚に触れるたびに体がこわばりペラペラとあの凶行の経緯を語った。

「…レンリ先生に言われたのです。『神に捧げるニエを調達してほしい』と。」

「はっ?」

 ことはこれまででは計り知れないほど深刻であったようだ。神に捧げるニエ?

「じゃあ捕まえた冒険者たちを…」

「はい。ここに連れてきていたというのは今日初めて、他の者とともにこの空間に入ることでわかりましたが…」

 骨だけ返してもらってそれをおいていたのか。

「何人かは衰弱死させたり錯乱させてしまったりしましたが…」

 悪びれもなくそういうハツネのみぞおちをアルバートは強打した。

「うっ…!」

「アルバートさん!」

 手を出したことに慌てオーギはアルバートを抑える。うまく入ったらしく、ハツネは苦しそうにその場にうずくまった。

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