気を取り直して奮い立つ…の3
(先程まで夢を見ていたような…)
頭を抱え、自分を取り囲む集団に目を向けるルリ。見下ろしてくる瞳は紫のフードの下に隠れて考えが読めない。
ーーお目覚めですか。巫女よ。
早速声をかけたのは天神であった。
ギョロリとした2つの目と4つに開く口を持つ巨大な姿をしている。胴、のようなところについた細い足で器用に、神殿の中心の柱のてっぺんにちょんと止まっていた。
棒のように細長い、あれは腹なのだという。
「天神様。お力添えを。」
ルリは周りの者たちがこれ以上近づかず、自分に危害を加えられないことを確認すると、物怖じせず、そのなんの生き物ともわからぬ天神に向かってまっすぐ伝えた。
ーー何か、いい夢が見られましたか?
だが、急ぐルリをよそにネウラリアは笑って軽い話を始める。
「いえ、そんなにいいものではなかった…と思います。」
肝心なことが見えずじまいだった。
「ことは急ぎます、世界の平和でも何でもお祈りいたしますから、早く離れたみんなのもとに向かいたいのです。」
ーーおや、あなたはその者たちと一緒に来たのでは?
ルリは正直に首を横に振る。
それを見てネウラリアはますます愉快そうであった。
ーーレンリ。君、巫女様は違うと申されていますよ。まさか無理やり連れてきたのですか?くくく。
押し黙るレンリ。上の前では得意の話術も通用しない。なんとか巫女の信頼を回復することが彼の第一義であった。
「巫女様は、奴らに騙されているのです!」
ローブの誰かが口走る。
「こうなった以上、私は、あなた方を信頼するのは難しいと思います。」
だから、ガスは使うべきではなかったのだ。どちらを信じるかはルリの中でももはや明白。
「天神様、申し訳ありません。今、すごく助けたい人たちがいるのです。お願いです。世界の祈りを直ちに捧げますので、私を彼らのもとに…」
ーーできませんね。
その一言で突如雷に打たれたような衝撃がルリの中を走る。
「なっ…なぜ…!?」
ーーあなたの今の願いを先に叶えてしまうからです。世界の平和を願う旅に邪念があってはならないですから。
邪念?大切な人たちを救い体も思う気持ちが、間違っているの?
ネウラリアはルリの心を見透かして語りかける。
ーー世界と仲間と天秤にかけたとき、どちらも同じ、は巫女様の中でしか成り立たないのです。絶対的な価値はある。ひたすらに世のため救世のため祈るのです。少しどこかで落ち着かれるのがよろしいかと。