まどろみの中…の4
意外とこのあたり、夜は冷えるらしい。体を抱いて二の腕をさすりながら、ルリとキーウィは静かになった通りの一角、目立たないところにテントをはろうとしていた。
「お財布がないとは…どこで落としたんですか?」
「面目もありません…。」
春の夜風が寂しく吹き付ける。
宿にはちゃんと部屋があった。だが、前金を払おうとしたところ、なんと先程までジャラジャラと見せていたキーウィのお金がない。ルリのお金で一人だけ泊まることはできてもそういうわけには行かない。
「巫女様だけ泊まられても別に構わなかったんですが…。」
なんとルリの意向で二人して夜の街でテント張ることになった。本来ならばキーウィの言うとおり、キーウィはどこかで野宿をして、ルリだけ宿に泊まるのが安心安全である。だがルリが言うには、
「キーウィは昨日からちゃんとしたところで寝てませんからね。」
テントともう一つ、タープとテーブルを準備すればキーウィも眠るスペースができるはず。一人だけ安全なところで寝るのはしのびなかった。
「ベッドじゃなくて申し訳ありませんが…」
「それでも眠れないよりマシですよ。」
街の隅に本格的なテントが立とうとしていた。だが、さすがに石畳の上には固定させることができない。
どうしたものかと悩んだところ、ルリが自分のバッグをゴソゴソと探った。
「マジックウェイト。これは基本的に投げて相手にぶつける投擲武器の一つなんですが、この力を使えば、重しにはなるかもしれません。」
「…?どういうことです?」
ちょっと持っていてくださいね。とルリがキーウィの両手のひらにポンとそのアイテムを軽く置いた。
「いきますよ!」
ピッと指を指した瞬間。
「ギャッ!」
キーウィの両腕が地面に落っこちた。前のめりになって彼はその美にたおらる。
あまりの重さに持ったままでは起き上がることができなくなった。