まどろみの中…の2
日が傾き。
(旅立ってはじめての夜でした。)
案の定、キャンプが決定する。ただし二人してそれなりにモチベーションが高く、鼻息も荒かったため初野営に対して何ら問題はなかった。惜しむらくは常識が足りず、夕方頃からテントを張り始めたことである。
「キーウィ…器用だったんですね。」
いい加減さがにじみ出ている彼なので、少しの不安が残っていたが、それを吹き飛ばすぐらいの手際の良さである。さっさと野原のど真ん中にテントを設営する場所を設定し、あっという間にテントがたった。あとは飛ばないように地面にペグを打ち込むだけである。
「巫女様!そっちから引っ張ってもらっていいですか!」
テントをはさんで向こう側から何かのポールの端をルリに放り投げてテントの上部に渡した。慌ててそれを受け取り、言うとおりに引っ張る。
ただしお互い力加減をわかっていなかった。
「うわぅっ!」
向こうのキーウィが一気に引っ張ったのでルリの腕ごとテントのてっぺんまで持っていかれそうになった。
「えっ!?巫女様!端っこ持ってましたか!」
ええ、持ってましたよ!
「…ごめんなさい、引っ張り直しますね。」
「はーい」
気楽なものである。
ルリはそれほど力がないにせよこれぐらいはできる。はずであるのだが、ある程度引っ張ったらびくともしない。
「ん、んんん…」
顔を真っ赤にしてルリはそのポールを引っ張る。いつの間にか地面に倒れ込みながら全体重をかける形になっていた。
「おっいい感じです。」
カンカンと何かを打ち付ける音が聞こえる。やがてその音がやんだが、一向にルリの方面にキーウィが回り込んでくることはなかった。
「キ、キーウィ?いつまでこれ…引いていれば…」
ルリが不安がっていると横からキーウィが塗っと顔をのぞかせてきた。
「あれ!そっちはまだ打ってなかったんですか!こっちがちょっと引っ張ってもびくともしなかったからもう終わってるもんだと…」
なにか失礼なことを言われた気がした。
「お、おわってませんよ!キーウィ、早く固定しましょう!」
頭をのけぞらせながら逆さまにキーウィを覗いてせかす。
「はいはいちょっと待っててくださいね。」
「もうだいぶ待っているんですが!?」
キーウィはビスを探しに反対側に回る。
「あれぇ?」
「どうしました!」
ルリは天を仰いで腕を震えさせながらキーウィの間抜けな声に反応を示す。
「いや…たしかここにおいてあったと思うんですが…」
ペグが見当たらないとのたまう。
それはそうだ、野原のど真ん中、暗くなった草原。そんなところであろうことか小さな杭をキーウィは地べた置いていた。
「キーウィ!」
あって間もない男であるが、これにはたまらずるりも怒り出す。手も足も出せないが。