うっかり敵にさらわれる…の8
ルリの出身はこの世界の東端に位置する島国。そしてその国は大国オパリシアの一自治区でもある。自治は認められているものの、本国からの要請には答えるのが道理。当代の救世の巫女、ルリのもとに神々のもとに、世界の困窮を収めなさい、と指令が下るのも当然のことであった。
「ですが彼らは問題視していたのです。」
彼らと連理に指をさされたの国、西のメジスティは数ある小国の中の一つ。ただその豊かな機械輸出産業から周りの国に一目置かれ、今や大国に肩を並べられるほどである。ラルドとも近く、かの国々は協力体制にあると言っていい。
「そんな重要な旅を軍も率いず、そのあたりにいそうな傭兵に任せていいのかと。」
ルリはそれは違う、と抗議する。
「目立つような行動を控え、危ない人々に私を連れ去られないようにするためです。みんなの出自はしっかり調べられられていて、傭兵ではありますが一人ひとりが立派な方々です。それにこれは…」
憤慨するルリをまるで子どもをあやすようにレンリは笑った。その話はわかった、と。
「巫女様の成長のための儀でもあるということでしょう。それがそもそも間違いなのです。乱れを正すこととあなた様の成長はまた別の話。同時にやろうとしてはいけない。まず、各地の神々のもとを訪ね巫女様のマナを奉じ、世を正す。その後で冒険でも何でもすればいいのです。」
レンリは手を広げ、ルリを向かい入れるように彼女の前に立った。