うっかり敵にさらわれる…の6
天神様はこの先に祀られているという。チャペルよりも更に明るいこの砂漠の真ん中の神殿で、初めて合う者たちにルリは誘われていた。
「私の願いは…この世界の混迷を取り除くこと。」
「はい。」
「それと同時に私自身が…成長する旅でもあります。」
「そうでございます。」
それを守るのか我々の役目。レンリを筆頭に皆がルリに向かって頭を垂れた。
「みんなが、アルたちが嘘をついていたんですか?」
紫の集団はそうだといった。
ルリは目に涙をため、深く息を吐いた。
レンリがその先にいるという、天神様のもとへルリを招こうとする。
「ならば…」
彼女はそれに応じなかった。ただただ胸のうちにつっかえていることを聞くだけである。
「…みんなと目的は同じです。あの場でみんなのことを助けなかったのはどうしてですか?」
「あなたのことをお守りするためですよ。」
レンリがそう優しく語りかけるが、ルリは首を振った。
「これまでずっと私の目の前に現れなかったのは?」
「それは申し開きできません。我々の落ち度でございます。」
「では、アルたち…みんなの目的は何なのですか?」
「わかりません。ただ、己の目的のため御身をかどわかしたという事実がございます。」
「この形では、レンリ先生。あなた方がそのような立場に見えますが。」
初めて、ルリは人のことを睨みつけた。アルバートを叱るときやキーウィに呆れるときとは違う。きちんとした警戒心によるものであった。
ルリはひどく後悔していた。アルバートがずっと自分に言い聞かせてきたこと、フリティアがさり気なく自分の身を守ってくれていたこと、それらすべてを無碍に扱っていたのだ。
「…そう思われても仕方がありませんな。」
レンリは汗もたらさずに一言、笑みを崩さぬまま答えた。
「私は、レンリ先生を信じたいです。」
両手をギュッと固く結ぶ。
「ですが、アルもティアもキーウィもオーギも私は信じているんです。」
揺るぎない強い瞳。それだけでルリは真実を伝えられない限り、これ以上相手に従わないことを意味していた。