うっかり敵にさらわれる…の4
フリティアは口に入ったリューサの体液をてにもった布巾に吐き出している。キーウィはオーギに足の治療をされていた。静かになったすり鉢の底で四人は身を寄せ合って周囲を警戒する。リューサという生き物について深く知らないからであった。
「多分一匹一匹が個々に巣を作っているのでしょう。」
「死体の匂い嗅ぎつけて寄ってくるかなーとか思いましたが。」
キーウィが一番危機に瀕したのに一番気楽なことを言っている。
「ともかくここからすぐに脱出しないと。」
魔物によって丹念に作り上げられた砂の坂である。おいそれと駆け上がることなど許されない。
しかし四人はここを急いで出なくてはいけない理由がある。
「上に無理矢理走っていけるか?」
アルバートは無駄だと思いつつも砂に足を埋めながら上へと走っていく。だが当然のように上に登ろうとしても、足は沈むばかりでズルズルと下に降りていってしまう。
「オーギさんのさっきの衝撃波でアルバートさんを上に吹き飛ばすのは?」
「いいですね、それ。」
キーウィとフリティアが物騒な話をしている。
フリティアは自分の失態を思い悩みつつも、それはそれとして引きずることよりも打開策を探す方に集中していた。ドライにも思えるがこれが自分の主を助ける現状の最善手である。
「先程のように誰かが踏み台になるのは。」
「踏み台がかりをリレーみたいに交代するのか?ダメだろ、そりゃ」
「深く足を突き刺して上へ登るしかないでしょうか。」
ドライな代わりに一度にたくさんの策を考えていた。現状は強行突破ぐらいしかなさそうである。
「一回一回手足を砂の奥深くに突き刺すのです。走っても無駄ですからね。上まで行ったものが上から命綱を垂らすんです。」
一番身軽な格好のアルバートがその役につくことになった。
砂の壁を目の前にアルバートは先程とは打って変わって落ち着いたまま四肢を砂の中に突き立てた。