うっかり敵にさらわれる…の3
顎が砕け、キーウィが吐き出された。
キーウィは地面に落ちた瞬間、ようやく背に手を回し担いでいた槍を抜いた。足に縛っておいた剣が外れているのに気づく。
「キーウィ、大事は!」
「ちょっとフラフラするだけで、ほらこの通りです!」
足場の悪い砂の坂にも構わず、槍を一振りして自分の無事を伝える。
食事を落として不機嫌なリューサがキーウィを睨みつけ、再びその人間に向かって牙をむいた。
「キーウィさん、来ます!」
パカリと開いた凶悪な化け物の口。キーウィは寸分たがわず、その自分の足をとらえていた喉を一突きに貫いた。
叫び声をあげるリューサ。のけ反り怯んだところにアルバートが駆け寄る。瞬く間に相手の突起に足を引っかけて猫のように頭上までよじ登った。
当然その姿をリューサもそのひとつ目で見逃すはずがない。頭を振り登ってきた不躾な者を落とそうとする。動くために焼けた砂が舞い上がった。
だがアルバートはその一瞬があればよかった。持っていた布を手早くリューサの硬い目に覆いかぶせた端を鋭利な短刀で突き立てて止めた。その直後、すぐに振るい落とされる。
「視界を奪ってやった!」
「熱感知と化されてたらどうします!?」
「この砂漠で熱感知はあほだろ」
突如目の前が真っ暗になったリューサはもがく。首を振っただけでは落ちず周りの助教が分からない。ぐるぐると暴れ回る。そしてやがて、
「あれはっ!」
フリティアがその隙間を見つける。首の付け根が上に出てきた。
躊躇なくフリティアは虎口に飛び込み斧で付け根を切りつけた。
この生き物の粘り気のある体液が傷口から噴き出る。