うっかり敵にさらわれる…の1
「不覚…!」
フリティアは震える拳で砂を叩きすぐさま大斧を両手に握りしめ、眼下のリューサを睨みつけた。
「さっさと倒して巫女様を追いかけましょう!」
キーウィがみなに活を入れる。もとより全員がそのつもりだ。足腰を踏ん張りながら四人は集中して
獲物が逃げ惑わず臨戦態勢になったことをモンスターも察したのか、金切り声を上げながら頭を出してきた。大きな一つ目の昆虫のような外殻を持つ大顎の化物である。牙のような口は左右に開閉し、カチカチと音を立て威嚇をしてくる。
甲冑で身を守る敵を倒すなら、その防具の隙間を縫って差し込むのがよい。もしくは鎧ごと殴打で叩き潰すか。しかしどちらにせよあの大きな化物に接近する必要があった。矢をつがえている余裕はないし、貫けるほどの威力はない。
「どこを狙いましょう!?目でないと言ってましたが!」
考えている余裕はない。それに例え、目をつぶしたところで致命傷には至らない。
「俺が噛みつかれてる間にみんなで他のところ攻撃しますか?!」
やはりキーウィはとんでもないことを言う。悪くはない案であるが。
リューサの口はたしかに人一人分ほどしかない。そこに鎧を着込んだキーウィが飛び込んでかじりつかれている間に弱点を他の三人で探す、というのだ。
もう時間もない。
不安はあれど三人はキーウィの案に乗った。
「くたばるなよ」
「任せてください!」
キーウィは急いで足に剣を縛り付ける。
「てやあ!」
蹴るように足を突き出してキーウィはリューサの口めがけて飛びかかった。
獲物が自らやってきたとばかりにリューサは口を割れんばかりに開く。その時、
「まて!キーウィ!」
アルバートが叫んだときはもう遅かった。
大顎を開いた口の奥にもう一つ口があった。そこからめくれるように開くと中から無数の、先の尖った触手のようなものが飛び出してきた。
飛び出したキーウィ脚にそれが生き物のように絡みつく。
「イッ!?このっ…!!」
赤赤とグロテスクにてかるその触手は、リューサのストロー管であった。牙は獲物を固定するだけのものだ鎧だろうが関係なく身動きを取れなくする。
管の先の針が容赦なくキーウィの足を突き刺してくる。刺さった管から神経毒を注がれ、激痛が走りキーウィが叫びだす。
「待ってろ!」
オーギとフリティアよりも先にアルバートが駆け寄った。