砂漠の中を彷徨い歩く…の4
無限に広がる砂漠の中に大きな窪があった。アリジゴクの巣のようなすり鉢状のものだ。あからさまにすぎるのでそこに落ちないよう迂回しながら前方を目指す。
だが。
「なんかあそこの中央で光ってますよ?」
キーウィがその大穴に興味を示す。
「モンスターか何かの類だろ。」
「ううむ…巫女様はなんだと思います?」
前を行くルリに声をかける。ルリは落ちないよう恐る恐る傍らにある窪の底を覗き込んだ。
「……たぶんリューサ…の眼、ですかね。あそこからじっと獲物がやってくるのを覗いてるんです。」
「へえ…砂漠で獲物を待つなんて効率悪いですね。」
「そうでもないですな。」とレンリ。
「近頃の冒険ブームにより向こう見ずな方が増えてきてますから。餌には意外と事欠かないかと。」
なるほど、とキーウィは平気な顔をして納得した。その向こう見ずな冒険者に自分は含まれていないとでも思っているのだろう。
「とりあえず足を滑らせなければ問題ないですよ。」
「さらにお嬢様には靴を差し上げてますからね。落ちることはまずありません。」
ルリだけに捧げられたピカピカの魔法の空中浮遊シューズ。
「定期的に魔具を開発して、あのようにデモンストレーションするわけです。そこで反応を見て、何人かにサンプルをお渡しする。」
驚いたルリに見せつけるように、そのリューサの穴の上を靴の力でに散歩歩いてみせる。
「…それは誰でも構わず配るのですか?」
オーギがレンリのパフォーマンスを遮るように問いかけた。
「いえ、そんなことは?私が、この人!と思った方だけです。」
軽やかにかの老人はルリの隣に戻った。
「…なるほど、それはそうですね。流石に全員にはお配りいただけませんか…。」
「それは申し訳ない。手持ちの靴が今日は一足分しかなくてですね。」
うん、と頷いてオーギはそれ以上聞かなかった。
だがアルバートには耳打ちをする。
「あの靴、ずっと眺めていたのですが、やはりなにか違和感がありました。おそらく、あの廃砦の地下で出会った…」
オーギがいいかけたとき、側の溝の底から地鳴りのような音が警報のように響き出した。