砂漠の中を彷徨い歩く…の2
まだまだはるか先の神殿と思しき建物を目指して。照りつける太陽にじわじわと体力を奪われ、さしもの屈強な戦士たちもどことなく動きがぎこちなくなってきていた。
「どこかで一旦休んだほうが。」
流石にこのままでは戦闘に入ると危険だと判断し、オーギを筆頭に護衛たちはキャンプの準備を始める。ルリももちろんその案には酸性であったが、どういうわけかまだまだ彼女は元気である。
「ルリ様、お辛くありませんか?」
水筒の水で湿らせたタオルをルリに捧げるように手渡しながらフリティアが巫女の状態を確認する。
「全然、です。ふふ、アルなんてだらしないですね。」
日よけのタープを張り終え、その影で一休みしているアルバートにルリがニヤリと笑いかけれ。サラサラの砂に骨組みを設置するのがどれほど大変なことだか。
「なんて冗談ですよ。みなさんありがとうございます。これ、レンリ先生からおすそ分けしていただきました。」
平べったい雪色のシートを人数分取り出した。
「冷却魔法によって中に入っているゲル状の何かが長時間冷たい状態を保っているらしいです。私は先にもらってたので、すみません。みんなにも早く渡せばよかった。」
ルリがそのシートを一枚一枚一人ひとりに配って回った。
「それは『フロストピース』という私達が開発したものでして。これから、世界的に売り出そうと考えている新商品なんです。ちょうどモニター試験の段階だったのでよかった。」
レンリは顎をなでて胸を張った。
「はい、アルも。」
ルリがレンリの使いパシリのようにアルバートにシートを差し出す。
少しの間があった。
一瞬だけ、ルリの表情がこわばったが、その後すぐにアルバートが受け取ったので安心する。
「ありがとよ。」
アルバートはそれをポケットにしまう。
「あっ、アル。それは頭とか、熱のこもりやすいところに乗せるといいですよ。」
「…そうか?」
アルバートは素直にルリの言うことを聞いた。ちょんと一枚頭に乗せ、その上から帽子をかぶる。ルリもそれを見て満足そうであった。
「…ね、レンリ先生は悪い人じゃないでしょう?」
屈託のない笑み。
だがアルバートはそれに笑顔を返しただけであった。