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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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全てを見抜かれる…の5(終)

 扉の先は乾いた熱砂の上。目の前の砂丘まで砂に足を取られながら重装備のルリの護衛たちは、先をいく主を追っていく。

「なんだって…急に…」

 暑さに文句を言いながら、キーウィは砂をける。この砂漠の砂はもとの街と似て一面真っ白であった。まるで水しぶきのように灼けた白砂が飛び散る。

「おい、早く。置いてかれてるぞ。」

 この聖域にもおそらく魔物のたぐいがいるのだろう。アルバートたちが左右を見渡すと、もぞもぞと砂の下をうごめく何かがいるのが見える。

「沼地もあれでしたけど、砂漠もあれ…だめですねこりゃ。」

 人一倍鎧を着込んでいるキーウィにはつらかろう。フリティアもあまり自由が効かなくて煩わしそうにしていた。そんな中、平地を歩くように砂の丘を登っていく占い師と巫女。オーギによると、

「おおかた先程の靴に宿った魔法を利用しているのでしょう。」

 だそうだ。確かにお近づきの印に、とルリにデモ用の靴を渡していたのを目撃している。

「アルバート、あなた割と早く動けるなら先行ってルリ様のそばを離れないようにしてちょうだい。」

「へいへい。」

 アルバートは革鎧をまとった軽装備。携帯品と少なく、足にフィットしている履きなれたシューズのお陰で砂の上でも他のものよりはあるきやすい。オーギはそのガッシリとした体つき故にキーウィのように砂に沈んでしまう。

 こうなってはフリティアが自分がまっさきに近づきたい気持ちを押し殺してでも、アルバートに先行してもらうほかなかった。

「おーい、ちょっと待ってくれ!後ろが遅れてる!」

「上で待ってるから大丈夫ですよ!」

 アルバートの下からの声に反応して上から元気な声が帰ってくる。

 そうではなくてだな…。言い返したくなったが、これ以上は喧嘩はできない。

「…だ、そうだ。」

 仲間たちに告げて一人、危うげな巫女様を追いかけた。

「おや、お早いおつきで。」

 レンリが涼しい顔をして汗を垂らすアルバートに会釈をする。

「…アル、みんなを置いて先にきたんですか?」

 ルリが眉をひそめて問いかける。

「お前の身も大事だろうがよ。」

「レンリ先生と一緒ですし…。アルは心配しすぎです。私だって自分の身ぐらいちゃんと守れますよ、自分で。」

 しかしどうもルリが変に意地を張っているようにアルバートには感じられた。

「…じゃ、俺が助けようとするのは迷惑だ、ってことか。」

「そんなことは言ってないです!過保護なんです。これは私の成長の旅でもあるんだから、アルだってそのあたり協力してくれなくちゃ。」

 ルリは比較的優しい言葉を選んでアルバートに話しているが表情は不満を語っている。

「騎士どの。巫女様から聞きましたが、確かにあなたの行動が巫女様の成長の妨げにもなります。つかず離れずの位置から眺めるのがよろしいですよ。」

 アルバートは口をあんぐりと開けた。

「ルリ、お前…まさか明かしたのか?」

「そうですが、何か。」

 ツンとそっぽを向く。

「何考えてんだよ、この旅は…」

「言わなくてもだいたい私は察していましたよ。聞いてはいけないとは思いましたが、仔細を知り、できるだけ私もご協力差し上げたいと。この出会いは運命だと思っておりますゆえ。」

 レンリは笑った。

「アルはこのところ人を信用しなさすぎです。レンリ先生に告げて悪いことなんてありません。絶対。そもそもそこまで疑り深くなったのは、一体どうしちゃったんです?」

 襲撃があった。自分が目を離したすきに彼女が危険な目に陥り、危うく世界が崩壊するところであった。嘘をついて手に入れた地位ではあるが、使命を全うしたかった。

 自分を責めるルリの大きな瞳。出会ったばかりの人間を信用しやすいのはわかっていたが。

「……アル?」

 ちょっと責め過ぎただろうか、相手を叱責することなどこれまでしてこなかったルリは顎に手を当ててなにか考えている様子のアルバートが気になった。もしかして加減ができてなくて傷つけてしまっただろうか。

(でも不満は不満。レンリ先生に教えられたように、相手にはっきりと意見することも大事ですよね。)

 不安を拭い去れないルリだったが、アルバートはすぐに笑顔に変わった。

「や、お前の言う通りだ。ゴメンな、そこまで考えてたなんて気が付かなかった。これからは俺ルリに倣うとするよ。」

 ルリはホッと胸をなでおろす。

「よかった。アルならわかってくれると思ってました。」

 ルリは眩しい笑顔で自分の騎士に微笑み返した。ようやく後ろの三人も追いつく。

「さ!皆さん、神殿は向こうです!進みましょう!」

 彼方に見える建物をルリたちは目指して再び歩き始めた。

「はい、ルリ様!あなたと一緒なら疲れも吹き飛びますわ!」

 フリティアが喜び勇んで横に並ぶ。キーウィとオーギも続く。

 アルバートは黙ってその後ろをついていった。

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